「眼をつぶって買っておけ!」は正しいのか

~ドットコムバブルのピークで買ってしまったAさんの悲劇~

というわけで、私は基本的に米国株インデックス、とりわけS&P500インデックスには肯定的です。しかし、この最強のインデックスにも弱点があると考えています。以下のチャートを見てください。

S&Pの長期的趨勢(1988年12月~2020年12月)

今、「米国株インデックスを眼をつぶって買っておけ!」と盛り上がっている若い人たちは知らないかもしれませんが、1990年代後半には「ドットコムバブル」「インターネットバブル」という現象がありました。

インターネット関連企業というだけで、まさに「猫も杓子も」株価が高騰したのです。しかし利益の実態を伴わない株価上昇は、当然のことながら持続するわけもなく、2000年3月をピークに大暴落を始めました。最高値から最安値まで、まさにS&P500指数では49%、新興企業の多いナスダック指数では78%の下落となりました。

「インターネットという新しい技術が世界を変える」「株をもたないと豊かになれない」という雰囲気にながされ、1990年代後半に株式投資を始めたAさんは、不幸なことに、S&P500に連動するファンドを高値近辺である1500ポイントで買ってしまいました。その後Aさんはバブルの崩壊に巻き込まれ、その時に買ったファンドはまさに半値になってしまったのでした。

その後、S&P500インデックスは大幅に構成銘柄も変えまがら、2002年10月にようやく反転を開始し、2007年後半に再び1500ポイントを達成します。ドットコムバブルのピークで買ってしまったAさんは7年間を経て「あぁ、やっと自分の持ち値まで相場が戻ってきた!」と喜んだことでしょう。

しかし、その安堵もつかの間、次は「リーマンショック」に巻き込まれて、あっという間に相場は奈落の底に沈み、ドットコムバブルよりも深い谷に突き落とされます。

Aさんはそこで、泣く泣くポジションを損切りしてしまいます。が、そこからS&P500インデックスは不死鳥のようによみがえり、自分のかつての持ち値(1500ポイント)を倍返しするばかりか、今では安値近辺(700ポイント)から5倍以上で取引されているのです。

バブルの中にいる人はバブルであると気づけない

このAさんの悲劇は特殊なケースではないと思います。バブルの中にいる人間は、神様でもない限り「自分がバブルの中にいる」とは夢にも思わないものなのです。

しかし、二度のバブル(ドットコムバブル、リーマンショック前のクレジットバブル)に巻き込まれたAさんは、2000年のバブルの最中に買ってしまった持ち値1500ポイントのS&P500インデックスをリーマンショックで損切ってしまいました。

もし我慢して持っていれば20年で2.5倍以上、年率5%弱で保有資産が増大したわけですが、自分の資産が半分になる恐怖を二度も経験しながら、なお保有を続けるのは簡単なことではありません。