重要なのは「購買力」を維持すること
だとすれば、定年退職者が投資をするにはどういう考え方でやればいいのでしょうか。
その答えは「購買力を維持するために投資をする」ということです。購買力を維持するというのは将来物価が上がってもお金の値打ちが下がらないように、せめて物価上昇並みにはお金を増やそうということです。
そもそも高齢者にとって、必要なのは「お金そのもの」ではなく、どんな状況になっても自分の欲しい物やサービスを手に入れることができること、すなわち「購買力」だからです。
正直言って日本の場合、過去20年ぐらいはずっとデフレの時代が続いていましたから、お金の値打ちが下がることはありませんでした。でも今後もデフレが続き、インフレにはならないという保証はありません。
もしインフレが来たとしても、公的年金の場合、基本は物価や賃金と連動しますから大丈夫ですが、自分の持っているお金は何もしないと価値はどんどん下がっていってしまいます。
だからこそ、定年退職者にとって必要なのは「大きく儲けるためにリスクを取る」ことではなく、「購買力を維持するためにお金を運用する」ということなのです。
買うべきなのは「個人向け国債 変動10年」
では、具体的にどうすればよいのでしょうか?
実はこれについても、「自分がどれぐらいリスクを取れるのか」によって方法はまったく異なってきます。まったくとは言わないまでも、あまりリスクを取れないという性格の人であれば、株式や投資信託ではなく、国債を買っておくべきです。
ただし、普通の国債ではだめです。今のような金利の低い時に買ってしまうと、今後もずっと低いままの金利しか受け取れないからです。
したがって買うべきなのは、「個人向け国債 変動10年」という変動金利型国債です。物価が上昇するようになると多くの場合、多少の時間的ズレはあったとしても金利も上昇します。したがって、この「個人向け国債 変動10年」であれば、将来物価上昇、金利上昇が起こったとしてもある程度対応はできます。
本当は「物価連動国債」が一番よいのですが、残念ながらこちらは個人が小口で買うことができません。「個人向け国債 変動10年」であれば、最低1万円から1万円単位で購入が可能です。
金利は年0.05%ですから低いですが、元本は保証されていますし、1年経てば解約も自由ですから、リスクを取らずに(ということは儲けることをあきらめて)資産を守るのであれば、これが実質上一番よいと思います。