家族が見学する場合は、ケアのあらゆる場面を考えた質問を用意しておきたい。
片山氏は、「母親の好きなもの、例えば決まった銘柄の牛乳を買いにいってくれるのか。わがままな親の希望にどこまでそってくれるのかも聞いてみればいいですね。施設のケアに対する姿勢は、案外こんな質問への回答に表れるものです」と指摘している。日常生活への対応について質問することがきっかけとなって、最終的には看取りに対する考え方さえも聞き取りができるそうだ。
また、施設が定期的に行っている入居者本人とその家族向けの懇談会の見学を希望することを依田氏は勧めている。
「クレームを話せる雰囲気のある施設は評価できますね。クレームこそが施設そのものをよくするきっかけになり、この業界を成長させる原動力ですから」
さらに、施設を運営面から客観的に分析することも必要である。事業主体、設備、職員配置、利用料金など有料老人ホームの概要が説明されている資料は「重要事項説明書」と呼ばれている。最近では、施設を紹介するホームページにPDF資料として添付されているケースもあるが、直接請求することもできる。
「この説明書の提出は事業者に義務づけられているので、それを拒否する事業者はその段階で信用できません」と注意を喚起してくれたのは、有料老人ホーム選びの段階から入居の手続き、入居後のサポートまで手がける有料老人ホーム入居支援センターの上岡榮信理事長。
「書類チェックはプロに相談することですね。この施設はあなたに向いていないとはどの事業者も言いません」
施設を自分の目で確かめることに加えて、その裏付けを書類で確認する。入居者の側に立ってアドバイスしてくれる専門家の力を借りることも必要である。
※すべて雑誌掲載当時
依田 平●ケア21社長
1993年、大阪に学習塾「ヨダゼミイースト」設立。99年ケアにじゅういち(現ケア21)に商号変更。在宅介護ステーション、有料老人ホーム、グループホーム、デイサービスを運営。その拠点は100ヵ所を超える。
片山ます江●伸こう福祉会 専務理事
大阪府出身。1986年、第一号老人介護施設「グラニー鎌倉」オープン。98年、サービスの質向上を追求し介護施設では初めてのISO9001を取得。以後、グループホーム、特養、ショートステイ、デイサービス施設、認可保育園を設立。
上岡榮信●有料老人ホーム入居支援センター 理事長
フリーランス通訳として大手企業や有料老人ホーム会社の海外視察、研修、調査の企画、手配を手がける。これまでに海外で、700件、国内で200件の施設を訪問。著書に『絶対に失敗しない有料老人ホームの選び方』がある。