習慣化を阻害する「心の機能」

わたしは、習慣化に作用するホメオスタシスの働きを、「習慣引力」と呼んでいます。この習慣引力は、いまお伝えした2つの働きを持っています。

1つは、「新しい変化に抵抗する」というもの。身につけようとしている習慣がどんなにいいものだとしても、変化には変わりありません。変化は脅威ですから、わたしたちの脳は一生懸命に抵抗します。そういう意味では、三日坊主を繰り返すことは、脳が正常に働いている証ともいえます。

そして、習慣引力のもう1つの働きが、「『いつもどおり』を維持する」というもの。過度の飲酒や喫煙など、本人がどんなに「やめたい」と思っている悪習慣でも、なかなかやめられないのは、脳がその習慣を「いつもどおり」だと認識しているからです。

習慣引力が持つこれらの働きを思えば、「新しい習慣を身につけるのは難しい」ことがよくわかっていただけると思います。

でも、見方を変えれば、「習慣引力があるからこそ習慣化できる」ともいえるのです。身につけたい習慣を一度「いつもどおり」に組み込むことさえできれば、その後は特別な努力など必要なく習慣を維持することができます。それが「いつもどおり」のことになったからです。

「複数の習慣を一度に身につけようとする」から続けられない

新しい習慣を身につけるのが難しいことの要因は、「習慣引力」の働きだけではありません。「複数の習慣を一度に身につけようとする」ことも、習慣化を難しくさせている要因の1つです。

複数の習慣を一度に身につけようとした場合、その習慣化の難易度は、「成功しにくい」といったレベルではありません。多くの人の習慣化をお手伝いしてきたわたしの経験からいえば、「無謀」という言い方をしてもいいでしょう。

疲れてジムの床に寝転んでいる太ったスポーツマン
写真=iStock.com/Nastco
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でも、多くの人は、つい複数の習慣を同時に身につけようとしがちです。

「やる気」が習慣化の邪魔をする

みなさんが新しい習慣を身につけようとしているときは、どんな気持ちになっているでしょうか? おそらく、「やる気満々で張り切っている」という人がほとんどであるはずです。

わざわざ新しい習慣を身につけようとしているのですから、「このままの自分では駄目だ!」「わたしは変わらないといけない!」「今度こそいい習慣をしっかりと身につけるぞ!」と思っているのですから、やる気満々で張り切っていて当然です。

すると、人間はつい欲張ってしまいます。

たとえば、「出勤前の朝に勉強をする」という習慣を身につけたいという人がいるとします。では、その人は、「出勤前の朝に勉強をする」という習慣だけを身につければいいのでしょうか? その答えは、「NO」です。

そもそも、出勤前の朝に勉強をするには、その勉強時間を確保する必要があります。つまり、「出勤前の朝に勉強をする」という習慣を身につけるためには、「早起きをする」という習慣も同時に身につけなければならないのです。