アマゾンがベンチマーク

しかしウォルマートは違いました。リアル店舗も活かした、新たなサービスを提供すればよいのだと。まさに固定観念を取り払う、業界を越える、成功していく企業の典型です。

テネシー州を走るウォルマートの配送トラック
写真=iStock.com/WendellandCarolyn
※写真はイメージです

ウォルマートの経営スタイルはアマゾンと似ています。実際、アマゾンをベンチマークとしています。物を仕入れ販売するのが、小売業のビジネス。このような考えに固執せず、どのようにしたら客が満足するかを真剣に考え、実際の施策として愚直に行っています。

サブスクリプションサービスを展開しているのはまさにその証しです。年会費98ドルを払えば、ふだんの割引はもちろん、さまざまなサービスや買い物を通じた楽しい体験を得ることができます。

ロッカーサービスはいい例です。アメリカでウォルマートの店舗に行くと、入り口にロッカーが設けてあります。このロッカーの中には、ネットで注文された商品が入っていて、客は店に入ることなく、望む品を家に持ち帰ることができます。

アマゾンの配送は倉庫からですが、ウォルマートは各地に実店舗があります。この実店舗から客の元に配送したら、アマゾンに勝てるだろう。という考えです。

成功の理由は「小売りに固執しない姿勢」

小売りに固執していないことは、今回のコロナ禍でも強烈にメッセージとして打ち出されました。ドライブインシアターです。コロナ禍の影響で、映画館に行くことができない状況が続いている。それならばとソーシャルディスタンスを保ちながら映画を楽しむことができる、ドライブインシアターを行おうと考えたわけです。店舗の駐車場を使って行うようです。

ウォルマートのビジョンは明確です。自分たちのことを支持してくれる顧客に、最高の体験を届けること。言い方はシンプルですか、そこさえできていれば、お客さんを囲い込めることが分かっているからです。アマゾンと同じです。

私も実際にウォルマートを利用することがありますが、アプリにおいては老舗企業とは思えない洗練されたUIで、とても使いやすい。ネットスーパーでありながら生鮮食品などを購入することもできます。受け取りに関しては先のとおり、アマゾンよりもスピーディーに、簡便に行えます。