大嘗祭の建屋の主要な木材はバイオマス発電の燃料に再利用
ちなみに、清水建設の入札金額は9億5700万円(税込み)。「国民の負担を最小限に」との天皇陛下の御意向をふまえ、前回の大嘗宮の時に比べて8割ほどの広さに抑えられた。一部建屋では、プレハブ建築も採用された。
前回、平成の大嘗祭の時には消費税が3%であったが、令和の大嘗祭では10%に引き上げられたことも規模縮小の理由となったようだ。
儀式が終了した大嘗宮は、「焼納(神聖なものを焼いて奉納すること)」されるのが通例という。しかし、今回は2000年に制定された「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」によって、再利用されることになった。
一時は住宅建材などに転用されることも検討された。しかし、部材の多くに穴が開いていたり、丸木は乾燥されていなかったりして、住宅用には不向きであった。
建材の再利用法は、意外なものだった。建屋の主要な木材はバイオマス発電の燃料に、庭の柴垣や砂利は公園に移設されたのだ。
バイオマス発電とは、その燃料である木チップを燃やしても二酸化炭素の増減に影響を与えない「カーボンニュートラル」の考え方によって、成り立っている。地球温暖化を加速させない次世代の発電として注目を集めている。
しかしながら役割を終えた後とはいえ、大嘗宮は聖なる建築物。たとえば古いお札やお守りなどはきちんとお焚き上げするだろう。そのため、再利用化に反対する声が上がったのも事実だ。
だが、宗教儀式もある程度は、産業界の動向と歩調を合わせることが求められる時代になったということ。それを令和の大嘗祭が示唆してくれた。その一方で、大嘗宮のバイオマス化は、意外にも「お焚き上げ」を考えた結果だったのかもしれない。