夫妻は、王室との距離をとりながらも結婚を機に得た「サセックス公夫妻」という称号を使ってビジネスを立ち上げ、“Sussex Royal”なる商標を用い、いわばキャラクター商品で儲けようとしていた。しかし、王室は夫妻に対し、「王室を意味するRoyalという言葉を使わせない」と明確に宣言、ヘンリー王子に冠されていたHis Royal Highness(HRH=殿下)の敬称も使わせないと決められてしまった。
では、全くの民間人として野に下ったかといえばそうでもないのだが、王室のさまざまなしきたりに従う義務からは遠い立場となったことは疑いがない。
そうした中でメーガン妃による大統領選への投票という、異例の事態が起きてしまった。
これまでに王室側から、妃による「選挙権の行使」に関するコメントは出されていないが、当事者らはおそらくモラル違反が起きたと考えていることだろう。
「英米のトランプ同士」蜜月だったが…
一方、英米関係に目を向けると、トランプ氏によるボリス・ジョンソン首相への「入れ込み」はただならぬものがあった。
トランプ氏はジョンソン氏を「英国のトランプ」と呼んで好意を示し、英国の欧州連合(EU)離脱、いわゆるブレグジットを支持した数少ない世界の指導者の1人だった。
そもそもトランプ氏は、ジョンソン氏が2019年9月に首相に選出された際、「ジョンソン氏はイギリスのトランプと呼ばれている。良いことだ。私は向こうで好かれている。ジョンソン氏は必要とされている」と公言。首相選出のレースが行われている最中にも、外国元首でありながらジョンソン氏応援の姿勢を辞さないなど、その入れ込みようは異常とも言えるこだわりようだった。
英国側がトランプ氏の姿勢を全面的に受け入れていたわけではなかったにせよ、ギクシャクしているEU・米国間の関係と比べれば、トランプ氏とジョンソン首相との関係は英米関係の安定にいくらか寄与してきたとみて良い。
ただし、実務者レベルでは英政府とトランプ政権との関係は安定していたわけではない。
トランプ氏の人種差別的発言や気候変動問題軽視の姿勢は英国が推し進める方向性とは対立している上、次世代通信規格「5G」分野から、それまで依存していた中国の華為技術(ファーウェイ)を追い出すよう米国から執拗に要求を受けるなど政策上の摩擦は小さくなかった。
EU離脱をバイデン氏が認めるのか
英国が抱える最も頭の痛い問題は、12月31日に期限が迫っているEUからの完全離脱に向けた各国との各種交渉だ。2月1日付で正式離脱したものの、そこから10カ月余りの間、英政府はもとより各国政府は新型コロナウイルス対策に追われ、離脱に向けた交渉が順調に進んでいるとは言い難い。