民間との「働き方の違い」が大きくなっている

民間との格差

実は、私が若手だった20年近く前から霞が関は長時間労働だったが、今ほどつらいとは思っていなかった。今よりも大分余裕があったので、同僚と雑談をしたり、先輩たちと目の前の作業を離れて政策談義をする時間など、職場にはいるが必ずしも仕事に追われていない時間もあった。何より民間企業に就職した同級生たちもみんな長時間労働だったから、自分たちだけが特別異常な働き方だとは思っていなかった。

この20年で、世の中の働き方改革は進み、民間企業ではかなり無駄な残業は減った。法律も変わったし、労基署の取り締まりも厳しくなった。世の中からブラック労働が一掃されているわけではないが、官僚を目指すような学生が就職する大企業ではコンプライアンスも厳しくホワイトな職場も増えてきた。

昔は、霞が関がブラックでも、民間もブラックだったから転職という選択肢はあまりなかったが、今はそういう選択肢がある。

国会議事堂
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霞が関の幹部の中には、昔に比べると無駄なことは減り改善していると言う人もいるが、若手にとっては今の民間と比べて今の霞が関の働き方や仕事のやり方がどうかが問題だ。

「国民の役に立つ政策を作る実感が持てない」と悩む若手

2.なぜ官僚になるのか

そもそも、ブラックと分かっていてなぜ官僚になるのだろうか。実は、官僚を志す学生にとっては霞が関の労働条件は魅力的ではない。安定はしているし、世間的に給料が安いということはないと思うが、大企業に就職する同級生に比べるとだいぶ安い。天下りで取り戻すなんていうのは大昔の話で、今の若手は全く期待していないだろう。

私は、10年以上採用活動に携わってきて、今でも若い官僚や公務員志望の学生と多く接しているが、社会のために政策を作る仕事をしたい、外国との協力を進めて日本をよくしたいという動機で官僚を志望する人がほとんどだ。

近年、政治的に「とにかくこれをやれ」と上から降ってくる仕事や、国会対応など各方面への説明にばかり追われ、自分で現場や客を見る機会や政策を考える時間がどんどんなくなっている。永田町・霞が関の旧態依然とした文化の中で、大量のコピーや国会議員への資料をメール送付でなく直接届けるなど、無駄な仕事にかける時間も多い。そういう中で、「国民の役に立つ政策を作る実感が持てない」「成長できている気がしない」と悩みを抱える若手が増えてきている。