「男性脳」だけでは革命は起こせない

この脳の愚直な使い方が、職場では功を奏することになる。自分の感情や、目の前の事象に影響を受けないから、何の疑問も持たずにルールを順守できる。私たちの女性脳にしてみたら、「このルール、どうなの?」と思うことも疑わない。1万人がキレイに足並みを揃えられるのだ。「遠くの目標」や「全体」のために、個人の事情に目をつぶれる。企業タスク向けの幸せな脳である。

しかしそれでは、なかなか革命は起こせない。なので、ときに直感が働く「異質の天才」が現れて、閉塞した世の中を一気に動かすことになる。

たとえば、スティーブ・ジョブズ。世のコンピュータが、醜い工業製品だった時代に、「僕の書斎に入れるなら、こんな醜い鉄の箱は嫌だ。美しい文房具としてのコンピュータを作ってみせる」と宣言して、伝説の一体型コンピュータを作ったという。彼の美意識では、当時のコンピュータ(無骨な配線でつなげられた鉄の箱たちのユニット)は、どうしてもゆるせなかったのである。

こういう「ゆるせない」「嫌」から始まる直感は、新しい世界観を作りだすための大事なキーファクターなのである。

その「ゆるせない」を作りだす「嫌なものは嫌」力が、女性脳では、男性脳より圧倒的に強い。言ってみれば、すべての女性に、スティーブ・ジョブズなみの直感力が備わっているのだ。

一般に、男たちは直感的な確信がないから、理論武装し、ルールを守る。

スティーブ・ジョブズは、直感力が強く、最初から確信があるから、理論武装する必要もなければ、ルールを守る意味もない。実際、彼は、電子工学も学ばず、ルールも守らず、世界を変えた。

この「スティーブ・ジョブズ」を「女」に置き換えてみればいい。

あるいは、あなた自身の名に。

男性脳型の産業社会に迎合せず、かといって、それに背を向けない

女は、最初から、「19世紀以降の産業世界」の枠組みに収まらない天才脳の持ち主なのである。

「男も女も違わない」だなんて優しく言われて、油断している場合じゃない。自らおとなしく、産業構造の枠に収まっているなんて、もったいなさすぎる。

オフィスでヒールを履く女性の足元
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叩かれたり、揶揄やゆされたり、笑われたってかまわないじゃない。そもそも、尺度が違うのだもの。幸せになる方法論が違うのだ。女には、女の正しさがあり、女の充足の仕方がある。

産業社会になんかくみしない、という選択肢ももちろんある。手に職をつけ、個人の才覚で生きる道だ。専業主婦も、その一つ。けれど、最初から産業社会に背を向けてしまうのはもったいないかもしれない。女の正しさで生き、女の充足を手に入れながら、産業社会でも生き延びる。21世紀の女性たちには、その選択肢があるのだから。

男性脳型の産業社会に迎合せず、かといって、それに背を向けないしなやかな生き方――女の人生は、男のそれより、ちょっとだけ深くて複雑だ。けれど、だからこそ、いっそうの輝きに満ちているのかもしれない。

覚えておいてほしい。産業社会は男性脳型。だから、私たち女性は、アウェイで闘っていく美しい戦士なのである。しかも天才型の。