約1年で“自己ベスト”改善から維持へ転換も

AGAの原因は、加齢に伴って男性ホルモンが変化することが一因とされる。男性は思春期を迎えると声変わりをし、ヒゲや陰毛が生え、射精できるようになる。こうした“男らしさ”を誘導するのが、男性ホルモンのテストステロンだ。

「男性ホルモンにはいくつかの種類がありますが、最も分泌量が多いのがテストステロンで男性ホルモンの90%を占めます。年を取るとこのテストステロンが、5αリダクターゼという酵素によって、ジヒドロテストステロン(DHT)というより強い作用を持つ男性ホルモンに“変身”します。テストステロンが男らしくあるためのレギュラーガソリンのようなものだとしたら、DHTはハイオクのようなもの。テストステロンの何倍ものパワーがあるDHTが髪の毛に作用すると、発毛の司令塔を萎縮させて発育を邪魔することがわかっています」(同)

「男性ホルモンが多い=薄毛になる」とよく聞くが、イコールではない。だが男性ホルモンという材料が多ければ、それだけDHTに変身する可能性が高いため、当たらずといえども遠からず。

内服薬のフィナステリドやデュタステリドはホルモンの変身に関わる酵素(5αリダクターゼ)の働きをブロックすることでAGAの進行を抑制する仕組みだ。一方でミノキシジルは頭皮の血流を改善して毛髪を作る毛母細胞自体を活性化し、発毛を促進するといわれている。

コストは2種類合わせて1カ月分が1万5000円程度

コストは、ミノキシジルとフィナステリドを併用する場合、市場価格は2種類合わせて1カ月分が1万5000円程度。そこに診察料を加えると倍近くになることもあるかもしれない。

薬の服用からどのくらいの期間で効果があるのかが気になるところだが、服用から1年前後で“自己ベスト”がみえてくるのが一般的だ。そこからは維持療法になることが多いという。

「目指すゴールは人によって違う」と小林医師は話す。

「患者さんが何を求めているのか。そこに医学としてどこまで寄り添って願いを成就できるのか。できることと、できないことを説明して納得してもらってから治療に入るようにしています。その結果、『改善』ではなく『維持』が治療目的になることもありますね。例えば今の時点で髪の量が少ないと感じても、10年後で同じくらいの量なら許せたりするでしょう。それなら増やすことにこだわるより、今の髪を守るという方法もありますね」

服用をやめれば徐々に元に戻る。しかし現状維持であれば毎日飲んでいた薬を1日おきにするなど様子をみながら調整していくことが可能だ。

最後に、薄毛で病院に行くことは決して恥ずかしいことではないと私は伝えたい。“嘆く”より、改善しようと行動するほうが、心身に、そして髪の健康にもよい影響を与えるはずだ。

(写真=PIXTA)
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