フランスには子供が生まれてから2週間、父親に仕事の休業権を与える「男の産休」がある。2002年に導入され、取得率は7割だ。なぜこのような制度ができたのか。フランス在住のライター髙崎順子さんが解説する——。
エッフェル塔の近くで、休日を楽しむ幸せそうな親子3人
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7割が取得する「男の産休」

父親の育児参加が盛んなフランスには、「男の産休」がある。子どもが生まれたばかりの男性に2週間の休業権を与える「父親休業(Congé paternité)」という親支援制度だ。性別を問わず両親が利用できる育児休業(Congé parental)とは別の制度で、扱いは女性の産休(Congé maternité)と同格。取得期間は「子どもの誕生後4カ月以内」で、使えるのは父親だけだ。

「男に産休? 産まないのに?」

この制度の存在を伝えると、日本人には十中八九驚かれる。取得率は7割と付け足すと、驚きはさらに増す。公務員に限定すれば取得率は9割近くに及び、フランスではメジャーな制度だ。

「母親どころか父親までそんなに休ませて、経済は回るんですか?」

ざっくばらんにそう問われたこともあるが、答えはイエスである。

フランスは日本と同じく、主要国首脳会議G7に名を連ねる先進国だ。人口は日本の半分ほどだが、国民一人当たりの名目GDPはフランス4万1000米ドル(世界32位)、日本3万9000米ドル(世界33位、日仏共に2018年国連統計)と近しい。それだけの経済力を持つフランスで、2週間もの「男の産休」を父親たちに与えられるのはなぜなのだろう? 労働現場や社会は、この休業をどう受け入れているのだろうか。

「産める・育てられる」を重視した施策

フランスで父親休業制度が施行されたのは2002年。労働法の定める3日間の「子の誕生休業」を、2週間に大幅拡大する形で作られた。狙いは主に2点で、1点目はより良い父子関係を築くこと。2点目は仕事と家庭の両立において、父親と母親の負担の偏りを是正することがうたわれた。

背景には、先進国共通の社会問題である少子高齢化があった。1970年代より女性の就労が一般化したものの、旧来の「男は仕事、女は家事育児」という性別役割分担の固定観念はかなり強固で、90年代に入ってもなかなか改善しなかった。仕事と家庭を両立する負担は女性に偏り続け、そのハードさを見越した多くの女性たちが、子を持たない選択をしたのだ。

国は多子家庭の給付金など出産奨励策を強化したが、それでも出生数は回復しない。そこでフランス政府は、女性たちが「産める・育てられる」と思える環境を整備する方向で、家族政策の充実を図った。その一環として提唱された父親育児への支援が、2002年、「男の産休」として結実したというわけだ。