母親と同じように「仕事を休まなければならない」

「90年代末まで、男性産休が議論されるのはまれだったんです」

当時を振り返って語るのは、フランスの家族政策を管轄する公的機関・家族手当金庫のカトリーヌ・コロンべ国際局副局長だ。

「父親の家庭参画には男性産休が有効、と初めて大々的に提唱されたのは、1997年。内閣から家族政策の概観検証を託された、女性検事総長エレーヌ・ジスロの報告書でした。その後の展開は早かったですね。ジスロ報告の3年後(2000年)には欧州議会で男性産休の推奨決議がなされ、これも制度化に大きく影響しました」

雇用の権利を守りつつ、父親にも産休を認めよ。それは母親産休と同様に代替不可能で、子どもの誕生直後であるべし――欧州決議の内容は、単純明快だった。子が生まれたら父親は仕事を休業し、家庭で過ごさねばならない。望むと望まざるとにかかわらず、働く母親たちがそうしてきたように。

「国会審議の際、男性産休の効能として担当大臣がアピールしたのが、男女格差の是正と、親としての責任を父親も果たせるようになること、だったんです」

2008~2012年の合計特殊出生率は2.0

法案は無事可決され、審議から約3カ月後には施行された。当初取得目標は4割と見込まれたが、初年度で有権利者の6割近い約33万6000人が制度を利用し、取得率は開始数年で7割近くまで急上昇した。

2018年に発表された政策有効性の検証報告書(フランス社会政策検査院)や父親産休の効果調査(国立人口学研究所)では、この休業が父親の育児参加や養育意識の改善に好影響を及ぼしたことが示され、公的に「大成功」のお墨付きがついた。施行から18年たった2020年9月現在、政府は期間を2週間から4週間とし、うち7日間の取得を義務化する改正案を発表。2021年7月から施行される予定だ。

また、父親産休を含めた1990年代後半〜2000年代前半の家族政策が功を奏してか、フランスは2008年から2012年の5年間、合計特殊出生率が2.0を超えた。少子化に歯止めをかける一定の効果が見られたのだ。2014年の同時多発テロなど社会不安の影響もあり、ここ数年は1.9前後で微減を続けているが、先進国の中ではスウェーデンやデンマークと並び「出生率の優等生」であり続けている。