ほかの殺人とは違う「フェミサイド」
筑波大学からフランスに留学していた黒崎愛海さんが2016年から行方不明になっていた事件で7月24日、元交際相手のニコラス・セペダ・コントレラス容疑者の身柄が、チリからフランスに移送された。現地の報道によると、同容疑者は黒崎さんに宛てて「病的な嫉妬心と所有欲をあらわにした」大量のメッセージを送っており、フランスではフェミサイドととらえられている。
フランスのフェミサイド調査団体によると、2019年に夫や元夫、恋人や元恋人などに殺された女性は150人にのぼる。パートナー間の殺人全体のうち、女性が被害者になったフェミサイドの割合は例年80%を超えている。ちなみに、日本の男女共同参画局の発表によれば、2018年のパートナー間殺人153件のうち女性が被害者になった事件は全体の55.6%だ。
フェミサイドはこれまで、ラテン・アメリカ諸国やアフリカ、中東で多発し問題視されていた犯罪だが、昨年からフランスでも、「明らかな女性蔑視を動機とし、女性が女性であるゆえに殺される、ある特殊なメカニズムを持った犯罪」として、他の殺人事件とは区別されて考えられるようになった。以来“Féminicide(フェミニシッド)”という、これまでなじみがなかった単語が、メディア上で頻繁に使用されるようになった。