新型コロナウイルス感染拡大を受け、国連や世界各地の政府機関、市民団体が、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者支援強化の必要性を訴えている。ドイツ各地で、DV被害を受けた女性の支援拠点となっているFrauenhaus(フラウエンハウス)「女性の家」でも、国内のDV増加を懸念している。北ドイツに住むジャーナリストの田口理穂さんが、ドイツのDV被害者サポートの状況をリポートする。

ドイツ全土でDV周知のキャンペーン

私が利用しているスーパーでは、レシートの末尾に、政府が運営するDV被害者の相談窓口に関する情報が印刷されているほか、店内にはポスターも掲示されている。コロナ禍を受けて4月に全土で始まった、“Zuhause nicht sicher?”「家は安全ではない?」というキャンペーンの一環で、約2万6000のスーパーや1万9000の薬局が参加している。コロナによる外出自粛で、助けを求めることが難しくなった被害者女性に向けた取り組みだ。

国が運営する、DV被害者支援サイト。相談窓口に関する情報が網羅されている。“Zuhause nicht sicher?”「家は安全ではない?」キャンペーンのポスターもダウンロードできる。
国が運営する、DV被害者支援サイト。相談窓口に関する情報が網羅されている。“Zuhause nicht sicher?”「家は安全ではない?」キャンペーンのポスターもダウンロードできる。https://staerker-als-gewalt.de/gewalt-erkennen

ドイツ連邦刑事庁の2018年のデータによると、ドイツでは122人の女性が夫やパートナー、または元パートナーによって殺されており、欧州ではフランスと1、2位を争うほどの多さだ。同じデータによると、11万4000人が身体的または精神的暴力にさらされた。この数字は氷山の一角で、実際にはもっと多いだろう。