各地で被害者を支援する「女性の家」

ドイツで、DV被害を受けた女性たちの相談窓口となり、夫やパートナーから逃れるシェルターとなっているのが、「女性の家」だ。全国に約350カ所あり、キリスト教団体や労働福祉団体、市民有志団体などさまざまな組織が運営している。そして「女性の家コーディネート」という組織が、260の「女性の家」と230の相談所をつなぎ、ネットワークを形作っている。

各地の「女性の家」がどのような活動を行っているのかを知るために、北ドイツのハノーファー市から列車で30分ほどの町にある「女性の家」を取材した。

ここでは、DVに悩む女性からの電話・メール相談を24時間受け付けているほか、加害者から逃れる場合の一時的な避難場所(シェルター)も運営している。シェルターには身体的暴力だけでなく、暴言や侮辱、行動制限などの精神的暴力を受けた人も入居が可能だ。

交通手段がない場合は、職員が迎えに行くこともある。また、シェルターに逃げ込んだ女性が自宅に荷物を取りに戻るときは警察官が同行するなど、警察との連携も取られている。

シェルターには、職員が常駐する事務所、入居者用の居間や台所、子どもの遊び部屋、庭があり、バスルーム2部屋、冷蔵庫付きの個室が6部屋ある。子どもがいる人は親子が一部屋に入居でき、子どもがいない女性は2人で一部屋をシェアする。定員は大人8人、子どもを入れると12人だ。

ただし、現在は新型コロナ対策によりソーシャルディスタンスを取らなければならないため、共同生活が基本となっている。既存のシェルターに入居しているのは母子3組のみで、残りは家具付き住居に入居中だ。

滞在期間は、短い人は数日だが、平均は2、3カ月。一年滞在する人もいる。通常は、シェルターに滞在した後はアパートを見つけて、自立の道を探る。まれに夫のもとに帰る人もいる。年に30~40人の女性がやってくるという。

取材の際は、建物や職員の写真撮影は断られたほか、職員に対するインタビューも匿名が条件とされた。建物の場所が特定されたり、職員の顔や名前がわかったりすると、DVの加害者から危害を加えられる可能性があるからだ。シェルターに滞在する人は、友達にも住所を決して教えてはならず、「女性の家」の職員以外と会う場合には離れた場所で待ち合わせたりすることになっている。

自治体からの助成金で、安定した運営

ドイツのDVシェルターのほとんどは、市民団体や福祉団体が運営しており、州や市、郡から安定した助成金を受けている。寄付のほか、DVの加害者側(夫やパートナー)が裁判で負け、罰金を科された場合には、その罰金も「女性の家」の収入となる。

財政基盤がしっかりしているので、大学で専門教育を受けた人が職員となっている。私が取材した「女性の家」では、ソーシャルワーカーが5人、事務員が1人、掃除員が1人、用務員1人(男性)、社会教育学を専攻している女子学生が働いていた。

4年前からスタッフとして働くFさんは、2歳と4歳の母親。社会教育学を勉強し、これまでは孤児院で働くなど子どもや青少年と関わってきたが、女性や母子を支援したいと考えて「女性の家」に転職した。「2020年になっても、先進国でさえ男女差別は根強い。この活動を通じて社会を変えたいのです」と話す。