※本稿は、サンドラ・へフェリン『ドイツの女性はヒールを履かない』(自由国民社)の一部を再編集したものです。
10歳時の才能や個性で進路を決めるドイツの教育システム
日本人が「和」を大切するのに対し、ドイツでは「個」の主張がモノをいうのは、ドイツに長く滞在した人であれば、誰もが認めるところだと思います。
さて、そんなドイツの「個」ですが、それはドイツ人を含む欧米人が「個人主義であるから」という【文化の違い】によるところが大きいです。ドイツの学校のシステムもまたこの「個」を重視しているものです。
ではドイツの学校のシステムはどのようなものなのでしょうか、日本と決定的に違うのは、「10歳で将来の選択をする」というところだと思います。
ドイツでは小学校は1年生から4年生までの4年間ですが、小学校卒業時の10歳の時点で、言わば「道が分かれる」ことが多いです。
将来大学へ行きたい子はギムナジウムという学校に進学し、そうでない子はギムナジウムには進学しません。大学へ進学する必要のない「職人の道」を選ぶ場合、ハウプトシューレ(近年はミッテルシューレともいう)という学校に進学します。その場合は卒業が15歳ぐらいなので、10代半ばでいったんは学校を終了します。それ以降は職業訓練(Lehre)を受けながら職業学校に通い、ゆくゆくは一人前(その一部がマイスター)になるという「職人の道」です。
批判もあるが、早い段階から将来に向けて準備ができる利点も
この10歳での「選択」は、小学校4年生時点での子供の成績、子供の性格や子供自身の意思、担任の先生や、親の意見など総合的に見て判断しますが、他の国(イギリスなど)と比べ、その選択が早いということに関しては、実はドイツの中でも賛否両論があります。否定的な意見としては、「これから、どうにでも成長するかもしれないのに、10歳で将来を決めてしまうのは早すぎるのではないか」という見方です。
その一方で10歳での選択に関しては、「早い段階から将来に向けて準備ができる」という利点もあります。日本では、全員が中学生になり、多くの人が高校生になりますが、「将来の(職業的な)夢」に関してはまだ分からない10代の子も少なくありません。またそれが許されているシステムでもあります。よく言えば、日本の学校のシステムは「長く夢が見ていられる」システムなのかもしれません。