安倍長期政権はわが国の歴史にとって「悲劇」だった
安倍晋三首相が辞任を発表しました。現在、次期自民党総裁選の真っ最中ですが、今回は、長期にわたった安倍政権およびアベノミクスを総括しましょう。
結論を先に言ってしまえば、安倍政権が打った手で「日本経済は短期的には改善したが、長期的な観点は欠けていた」ということになります。そして、その大きなツケは確実に国民に回ってきます。その意味で、安倍長期政権はわが国の歴史にとって「悲劇」でした。
安倍首相は2012年12月の総選挙で、自民党が旧民主党を破って以降、7年8カ月にわたる長期政権を維持しましたが、そのリーダーシップの特徴は、「短期的な問題解決能力や突破力はあるが、長期的なことを犠牲にしている」「周囲の忖度に甘えた、公私混同」だったと私は考えています。
短期的には問題解決したが、長期的にはかなり危ない
アベノミクスは当初、「3本の矢」を掲げてスタートしました。
「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「成長戦略」です。その中で効果を現わしたのが、金融緩和、つまり「異次元緩和」です。それにより、低迷していた株価を2倍まで引き上げ、求人を増やしたという点は、問題をある程度解決したことに間違いはありません。具体的に、数字の変化を見てみましょう。
図表1を見てください。政権が発足した当時(2012年12月)の日経平均株価は1万円を少し超えるレベルでした。それが、政権終了時には、2万3000円程度まで上昇しています。2倍以上です。80円台の円高に苦しんでいた日本経済でしたが、それも短期間で100円台まで戻しました。
雇用に関しても同様です。4%を超えていた失業率は、2%台まで低下しました。このところは、コロナウイルスの影響で上昇していますが、それでも2.9%です。一時は2.3%まで下がりました。
職を求めている人に対して、どれだけの求人があるかを表す、有効求人倍率も、政権発足時には1倍を切っていました。職を求める人すべてに職がなかったのですが、それもピークの2019年上期では1.63倍まで上昇しました。(直近ではコロナの影響もあり1.08倍。)就業者数も政権期間中に380万人強増加しています。
一方で、「非正規雇用者が増えた」「実質給与は全くと言っていいほど上がっていない」など、問題点もありますが、それでも景気回復には一定の成果があったと評価すべきでしょう。