ウォルトが展開する都市は北欧のほか、中欧や東欧が多い。ワルシャワ(ポーランド)、プラハ(チェコ)といった人口100万~200万人ほどの都市での展開が目立つ。米サンフランシスコ発祥で先行したウーバー・イーツの隙間を縫い、ヘルシンキなどと同じ、中規模の街を狙った「ニッチ戦略」のようにもみえる。

ウーバー・イーツも設立はウォルトと同じ2014年だが、日本には2016年9月に東京に上陸した。以降、大都市圏から徐々に地方に進出。今年8月末までに九州を含む全国26都道府県への進出を果たした。世界では北米、南米、欧州、アジアなど45の国・地域、6000都市以上に進出している。

ウーバーとの差別化を目指す…個人店の開拓、心配り

ウォルトともどもサービスは、スマートフォンのアプリで飲食店と料理を選んで注文し、配達員が店から料理を受け取り、30分以内に指定の場所に届けるという点で大差はない。違いは加盟店の性格とカスタマーサービスにある。

ウーバーが総じて大型チェーン店の加盟を急いだのに対し、ウォルトは広島で、個人店や配達実績のなかったレストランの開拓に努めた。その一つが8月1日に広島市中心部で改装オープンした広島アンデルセンだ。

全国チェーンのベーカリーの本店で、カフェレストランを併設しているが、コロナ禍で営業を自粛しており、店内にウォルトの専用カウンターを設けた。旧店舗で人気だったクラブハウスサンドイッチやビーフシチューなどに、アプリ経由でひっきりなしに注文が入る。

スカイブルーのバッグを抱えた配達員が頻繁に出入りして商品を受け取り出ていく。デンマークの人魚姫伝説をイメージする同店は、本店のみウォルトと契約しており、北欧の雰囲気を醸し出す。

きめ細かなフォローも売りの一つだ。広島にカスタマーサポートを置き「返信はチャットで1分以内を心掛け、料理の内容やサービスで反応があれば店にフィードバックします」(新宅氏)。ウーバーでは配達員が商品を捨てるなどのトラブルがあったが、問題が起きないよう細心の注意を払う。配送にはメッセージカードを添える気配りも忘れない。

「ウーバー」と「出前館」でシェア8割以上

日本のフードデリバリー市場は急拡大中で、緊急事態宣言が発令された5月の全国売上高実績は、前年同期比3倍以上になったと、市場調査会社のエヌピーディー・ジャパン(東京)がまとめている。

同社によれば2019年1年間の市場規模は前年比2.4%増の4182億円だったが、今年に入ってコロナ禍で市場は急拡大。1~3月は前年同期比10%増、4月は同29%増と急上昇、5月に跳ね上がり、6月以降もほぼ同水準で推移しているという。

国内の市場はウーバー・イーツと出前館の2社が大半のシェアを持つとみられる。モバイルアプリ分析調査のフラー(千葉県柏市)がアンドロイドのユーザー、約15万台を対象に1~7月のアプリ利用による注文を調査したところ、ウーバーが57.4%、出前館が26.7%で、2社で8割以上を占めた。

「ただ出前館はウェブからの注文も多く、両社の利用率は拮抗している」と担当者はみている。出前館は3月、LINEから300億円の出資を受け、アプリ機能を強化しウーバーに対抗する姿勢を鮮明にしている。