フィンランド発のフードデリバリーサービス「ウォルト(Wolt)」が広島に初上陸した。ジャーナリストの藤澤志穂子氏は「広島は企業のテストマーケティングによく用いられるが、ウォルトが初上陸した理由はそれだけではない」という――。
自転車で配達している女性
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広島ではお馴染み「スカイブルー」のバックを背負った配達員

収束の見えないコロナ禍の巣ごもり需要で「ウーバー・イーツ(Uber Eats)」などのフードデリバリーが急速に広がっている。競争が激しくなる中、北欧フィンランド発祥の「ウォルト(Wolt)」が3月に日本に初上陸し、広島市からサービスを開始した。

耳慣れない人が多いだろう。それもそのはず。東アジア進出の最初が日本という。なぜ日本、そして広島だったのか。決め手の一つは広島の「自転車」事情がある。

筆者は昨年、仕事の関係で東京から広島市に移住した。まず驚いたのは、大人から子供までが自転車で街中を行き来していることだ。

市中心部は川と川の間の平坦な扇状地に栄えており、温暖な気候もあって、自転車は年間を通じて走りやすい。特に最近はコロナ禍で公共交通機関を使わず「自転車で40分走って職場に行く」という人はザラにいる。

国勢調査をもとに国土交通省がまとめたデータ(2010年)によれば、広島市の通勤・通学における自転車分担率は17%。国内主要都市の中でも比較的高い。

フードデリバリーは、単発契約のギグワーカー(配達員)による自転車での配達を主体とする。広島市では今年に入って2月にウーバー・イーツ、3月にウォルトが相次いでサービスをスタート。全国的な知名度が高いのはウーバーだが、広島で圧倒的に目立つのは筆者が見る限り、スカイブルーのバッグにロゴを刻んだウォルトである。