医療機関の立地や建物の構造で対応する疾患を分担する

となれば、これらの患者さんを、感染症の患者さんが多く集まる施設とは別の医療機関で対応できるように対策しておくことが必要になってくる。

全国に発熱外来を多数新設できればそれに越したことはないが、インフルエンザシーズンは、もう目の前だ。今から準備するのは、施設建設というハード面でも、スタッフ募集といったソフト面でも、とうてい間に合わないだろう。そうなると既存の診療所を機能別に分類するしかないということになる。

先述したように多くのビル診では入口から動線、待合室の分離は不可能だ。一方、一戸建て診療所(専用駐車場が有ればなお理想的)であれば、工夫次第で動線の分離は可能であろう。まずインフルエンザシーズンを迎える前に、全国の初期診療を担う診療所等の医療機関を、動線が分離可能な施設と不可能な施設とに、地域医師会と行政が協力して早急に分類しておくことが必要だ。

その上で、前者のような動線を分離できない、すなわち感染性の疾患に対応することが不可能もしくは不適切であると考えられる医療機関では、慢性疾患など、非感染性疾患に特化した診療を担ってもらうこととし、感染性の疾患は後者を中心に担当してもらうといったように、医療機関の立地や建物の構造で対応する疾患を分担するよう施策を講ずるのだ。

医療機関で不公平が生じないように財政支援も必要だ

そして、感染症に特化した診療所には、感染防護体制を十分整備できるような支援とCOVID-19に対応することによる“患者離れ”から生じる減収を補うべく診療報酬上の手当が必要だ。非感染性疾患を扱う診療所に対しても、COVID-19のみならずカゼやインフルエンザといった感染症を診療しなくても経営困難とならないよう、どちらの診療体制をとる医療機関にも財政支援を行うべきだろう。十分かつ公平な財政支援をしなければ、おのおのを担う医療機関の数に偏りを生じてしまいかねないからだ。

このほど厚生労働省は8月26日付で「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備」をやっと公表した。そこでは「地域の診療所等において、必ずしも帰国者・接触者外来と同様に院内感染防止のための動線の確保ができるとは限らない。そのため、各地域や各医療機関において、地域の実情を踏まえて、院内感染を防止しつつ、発熱患者の診療・検査を行う体制を検討していく必要がある」との見解が示されており、ここまで私が述べてきた懸念と同様の認識を有しているようではある。

しかし、もう残された時間は少ない。早急に、発熱患者さんの診療・検査が可能な医療機関と、不可能あるいは不適切な医療機関を地域ごとに峻別し、誰もがアクセスできる複数の媒体を通じてわかりやすく公表しておかねばならない。そして一刻も早く国民に対して、この冬の医療提供体制および医療機関の適切な受診方法について周知徹底を図っておくべきである。