感染性疾患と非感染性疾患の診療時間を分けることは可能なのか

もっとも郊外に多い一戸建ての診療所で敷地内に駐車場スペースがあれば、熱発者を屋外や車内で診療・検査するなど、感染疑いとそれ以外の患者さんとを接触させないようにすることも可能だろう。しかし都内など人口密集地に多いビルの一室で開業している診療所(ビル診)の場合は、そうはいかない。

つまりビル診の場合は、感染症専用の別入口と院内の動線、空間と空調が完全に分離された待合室を有していなければ、院内でクラスタが発生する可能性があり極めて危険であるから、発熱や咳など少しでもCOVID-19が疑われる人の診療を行うことは、事実上不可能であるとも言えるのだ。

「空間的に分離できないのなら、時間的に分離するという手段もあるではないか」との意見もあるかもしれない。しかし、じっさいに運用しようとすると、それはかなり困難であることがわかる。私の勤務するクリニックも空間的分離のできないビル診のため、少しでも院内感染のリスクを軽減すべく、熱や咳、カゼ症状の患者さんと、慢性疾患や皮膚疾患、外科系疾患という非感染性疾患の患者さんとを診療時間で分離すべく、仕組みを作ってみてはいる。

しかし、熱発して来院する患者さんや症状がつらい患者さんは、仮にその仕組みを知っていたとしても、該当する時間まで待つことが難しい。また飛び込みで初診する患者さんは、そもそもその仕組みすら知らない。そういった患者さんに、後刻出直して来るように言うことも困難であるから、時間的分離の仕組みを作ってみたところで、運用上では、ほとんど機能していないと言ってよい状況なのだ。

新型コロナを季節性インフルエンザと同等に扱っていいか

COVID-19は現在指定感染症であるため、診断された場合は疑似症も含め直ちに届け出を要し、感染者は原則入院勧告されることになるが、市中感染の様相を呈してきた現状を踏まえて、また季節性インフルエンザの流行を前に、指定感染症を外し、2類感染症相当以上(新型インフルエンザ等感染症相当)の現在の扱いから、季節性インフルエンザと同等の5類感染症に位置づけてはどうか、との意見が出始めている。

COVID-19とインフルエンザとは、その初期症状からは診察所見だけでは峻別できない。昨シーズンまでは拙著『病気は社会が引き起こす——インフルエンザ大流行のワケ』(角川新書)にも記したとおり、インフルエンザ流行期にインフルエンザと矛盾のない症状を呈している人には、迅速検査を行わずともインフルエンザと診断し治療することが通例であった。しかし少なくとも今シーズンは、急な発熱で受診した人については、その鑑別のために検査という手段も必要となってくる。日本感染症学会も医療機関向けの指針で、今シーズンのインフルエンザとCOVID-19の同時検査を推奨した。