今年の秋冬は、季節性インフルエンザと新型コロナウイルスの同時流行が懸念される。医師の木村知氏は、「季節性インフルエンザ流行前に、医療政策と診療体制をゼロベースから見直す必要がある」という——。
検査結果を患者に説明する医師
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前年同月比で診療所の患者数が3~5割減

「コロナが怖くて、しばらく受診できませんでした」

私が診療しているクリニックには、たびたびそういった患者さんが訪れる。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染したとされている人は、全国で7万人、東京都だけでも2万人を超えた。第2波と呼ばれた波もピークアウトしたように見える。しかし、今後、秋から冬にかけて流行が再燃、中高年の感染者が増えるとともに重症者が増加すれば、医療提供体制の逼迫ひっぱくは避けられない。

加えて医療従事者への感染も重なれば、救急受け入れ困難や外来診療休止を余儀なくされる医療機関も増え、わが国の医療が、COVID-19に対してのみならず全般的に危機に瀕する事態も起こりかねない。

4月の緊急事態宣言以降、COVID-19対応に追われる感染症指定病院がある一方で、多くの診療所は患者さんの急減でガラガラとなった。前年同月比で患者数が3割~5割減というところも少なくないと聞く。

こうした現象は、院内感染を恐れる患者さんが不要不急の受診を控えたことが大きな要因と言われるが、その一方で、COVID-19への対応が困難として、熱発者や咳などカゼ症状を有した患者さんの診療を断る医療機関があったことも無視できない。