リーダーと市民のあるべき関係とは

クオモ知事は、記者会見のせいで、だんだん全国区の人気が出てきた。ジョー・バイデン候補より、よっぽど大統領に適任だ、という声もちらほら出始めた。

ジョーバイデンのFacebookファンページ
写真=iStock.com/Hoaru
※写真はイメージです。

そこで弟のクリス・クオモがCNNのニュース番組で中継がつながったチャンスに、兄のクオモ知事に突然こんな質問をした。「大統領選に出る気はあります?」。

打ち合わせなしだったのだろう。クオモ知事は、ハトが豆鉄砲をくらったような顔をして、一瞬黙り、でもすかさず答えた、「ノオ!」クリスはなお追い打ちをかける、「ほんとに?」答えはまたも「ノオ!」そして笑いながら、こうフォローした。「なかなかいいジャーナリストになったと思うよ」。クリス・クオモは、年の離れた弟なので、クオモ知事の前ではかたなしである。

橋爪大三郎『パワースピーチ入門』(角川新書)
橋爪大三郎『パワースピーチ入門』(角川新書)

クオモ知事は、雄弁家というのではない。理系っぽいスピーチで、余計なことや、もって回ったことは言わない。小学生でも理解できるような、わかりやすい英語を使う。アメリカは移民の国で、英語がよくできない市民がとても多い。民主党はとくに、そういう人びとに気を配っている。

クオモ知事のスピーチから、今のアメリカのあり方、現代世界の一端が見えてくる。日本人は、スピーチに関心がなさすぎる。これでは、ビジネスにも差し支える。

そこで、今夏、『パワースピーチ入門』(角川書店)という本を上梓した。コロナ危機があぶり出した、リーダーと市民のあるべき関係を考えた。どうか手に取って、パワースピーチのコツをわがものとしていただきたい。

【関連記事】
たった3段落で世界を変えたチャーチル、5600字かけても日本を動かせない安倍晋三
安倍首相のスピーチが「言い訳ばかり」に聞こえる根本原因
いまどきスピーチの必殺技「メルケルの斜方形」の恐るべき効果
香港問題を正面から批判しない安倍首相は、中国政府に見下されている
国民に見捨てられた文在寅…「支持率低下」にビビッて「反日政策」を強行した末路