ホンハイ劉会長「中国が世界の工場だった時代は終わった」
コロナ以前では中国が「世界の工場」として大量生産を担い、世界の工業製品の価格を下落させました。それによって、アップルなどの企業は開発研究という「付加価値を高めることに集中」することができたわけです。ある意味、米中(台湾)の企業は互いに支え合ってきたとも言えるでしょう。現在、コロナにより多くのテクノロジー企業がサプライチェーンの見直しを迫られています。
「中国が世界の工場だった時代は終わった」と鴻海(ホンハイ)の劉会長は発言していますが、事態はそう、シンプルではないのです。「脱・中国工場」を急いでいるのはホンハイだけでなく、台湾のライバル企業・中国の新興企業も同じ。ホンハイ傘下の女性工員が創業した中国の立訊精密工業(ラックスシェア)が台湾EMS(受託製造)の工場を買収し、本家・ホンハイを脅かすまでに成長しており、「世界の工場」の勢力図が変わる可能性が出てきています。
新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに中国一極集中のリスクを再認識し、各国はサプライチェーンの切り離しを検討しています。中国から外資が撤退する、いわゆる「デカップリング」が進めば中国経済には大打撃、その失速に歯止めがかからないとの議論が巻き起こっています。しかし本当にそうでしょうか。
実は、この「デカップリング」が進む中でiPhoneの生産を担う台湾企業が、中国企業に一部買収され、中国の手に落ちたのです。これに対してホンハイ精密工業の焦りは隠せない。