無策すぎる再発出回避の取り組み
だが、政府が取り組む再発出回避の取り組みって何? それと国の観光需要喚起策「Go To トラベルキャンペーン」はどうリンクしていくのか。安倍政権が「旅行しましょう! 観光しましょう!」と旗を振った結果、沖縄県などの人気観光地では感染が蔓延し、医療提供体制が逼迫。もはや「陽性者数が少なく見える自治体はPCR検査数そのものが少ないだけで、沖縄県や大阪府、神奈川県などは検査数を増やしていけば陽性者数も増えるはず。医療提供体制が整っていない地方はかなり危機的といえる」(全国紙社会部記者)状態となった。最近は多くの自治体で新規感染者数が過去最多を記録し、政府が目安とする重症者数や死者数も増加傾向にある。1日あたりの新規感染者数が全国で1000人を超える日もザラで、「何? この無策ぶり」と憤る人は少なくない。
さすがに、そろそろ感染拡大を防ぐために手を打つのかと期待すれば、安倍政権は「現時点で緊急事態宣言を再び発出する状況ではない」と壊れたスピーカーのように繰り返し、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が懸念する「感染爆発してからでは遅すぎる」との見解をまたしても無視する考えのようだ。しかし、分科会がまとめた感染状況の指標すらも「数値に当てはまれば直ちに緊急事態宣言をやるかどうか、それはその時の状況次第」(西村康捻コロナ担当相)というのでは、国民は何を目安にどれだけ耐えていけば良いのか分からず、不安や不満が蓄積していく。
衆議院解散・総選挙のカードを温存
さて、本題に入ろう。なぜ安倍政権が専門家の見解を無視してまで「政治判断」の余地を残したのかと言えば、単に経済的な打撃を考慮してのものではない。その最大の理由は、安倍総理の延命につながる衆議院解散・総選挙のカードを温存する必要があるからである。
総理官邸を担当する政治部記者は「巷間言われているように、安倍官邸は今秋の解散総選挙を画策している。しかし、緊急事態宣言を再発出してしまうと、『そんな大変な時に選挙なんてけしからん』との大ブーイングが起きる。だから、どんなに感染爆発しようが総理が『延命=解散』を断念しない限り再発出はない」と見る。実際、総理の盟友である麻生太郎副総理兼財務相は「今秋解散」を進言し、連立を組む公明党などに根回しを進めている。それは麻生氏が自らの政権発足直後にリーマン・ショックに直面し、解散を見送った結果、「麻生おろし→下野」に追い込まれた苦い経験に基づくものだ。
ただでさえ、コロナ対応で国民を愚弄し続けて内閣支持率が低空飛行を続ける中、仮に来年夏に延期された東京五輪・パラリンピックの「中止」を国際オリンピック委員会(IOC)が判断すれば、安倍政権へのダメージは甚大なものとなる。レームダック化した政権に国民はいよいよ「NO」を突き付けるだろう。