メディアを巻き込んだ「安倍隠し」「失策隠し」
「安倍総理は今、ゆっくり寝ておけばいいんだよ」
新型コロナウイルスの感染再拡大が止まらず、全国各地で過去最多の新規感染者数を記録していた7月下旬、安倍政権の政府高官は旧知の記者にこう漏らした。たしかに6月17日の通常国会閉幕後、あれだけ「私が決断しました!」とドヤ顔を見せることを好む安倍総理の姿はほとんど見られなくなった。8月6日には原爆忌の式典に出席した広島市で49日ぶりとなる記者会見を行ったが、それもわずか約15分間。
この間の宰相の動きとしては、巨額の税金を投入して国民に配布した布マスクから大きめのサイズに変えたとか、7カ月ぶりにフィットネスジムで汗を流したとか、コロナ禍の国民生活においてどうでも良いニュースばかりだ。総理の代わりに菅義偉官房長官が相次いでメディアに出てきたかと思ったら、「コロナ対応が悪いのは政府のせいではない。自治体が悪い」と首長たちに責任転嫁する始末で、メディアを巻き込んだ「安倍隠し」「失策隠し」はなおも続いている。
国会閉会中に行われる閉会中審査はあるものの、野党が要求している臨時国会の開会は拒否。あまりにも長すぎる「夏休み」をエンジョイしているのかと疑ってしまう。総理ご自慢の山梨県にある別荘への訪問計画があったというが、東京都の小池百合子知事が不要不急の移動自粛を要請したことから立ち消えになったようだ。やはり、「夏休み中」だったんかい!
社会・経済活動との両立を図るのは当然
ちなみに、総理の夏のボーナスは約400万円、閣僚は約340万円。公職選挙法違反の罪で起訴された河井克行前法相、案里参議院議員ら国会議員にもそれぞれ約320万円が支給されたというから、職を失ったり収入が減ったりしている国民の気持ちなんて分かるまい。「上級国民」の皆さんは、さぞぜいたくな生活を満喫していることだろう。念のため触れておくが、これはトップの動静が一時途絶えていた北朝鮮の話ではない。
勘の鋭い方はもう気づいていると思うが、前出の「政府高官」は安倍総理に極めて近い人物である。全国紙政治部記者はこう解説する。「コロナ対応での失策の数々が国民の目にも明らかとなり、内閣支持率はガタ落ち。得意の外交もコロナ禍でつかえず、再浮揚させるカードがない。憲法改正もできず、任期満了を迎える来年9月まではレームダック(死に体)状態となる。国の緊急事態宣言の再発出なんて安倍官邸は考えていない。そんなことをしたら自らの手足を縛ってしまうのだから」。
たしかに緊急事態宣言を発出すれば感染抑制に効果が見込める一方で、経済面での影響も大きい。安倍総理は8月9日の記者会見で、今年4~6月期の国内総生産(GDP)が「年率換算で20%を超えるマイナス成長が予想されている」と説明し、リーマン・ショックを上回る影響が見込まれると懸念した。「雇用や暮らしに与える影響を考えれば、できる限り(再発出を)避けるための取り組みを進めなければならない」(安倍総理)というわけだ。社会・経済活動との両立を図りつつ、再発出回避への取り組みに総力を挙げることには異論はない。