緊急事態宣言を絶対に出さない理由

そのリミットが刻々と近づく中で、安倍総理は「その前」に解散総選挙を何としても断行し、失われた求心力を回復させたいというわけだ。野党が要求する臨時国会の開会を10月以降に予定するのは「秋解散」に備えてのものだろう。国民民主党が「分裂」し、日本維新の会の勢いも減退するなど野党が頼りなさすぎる中で総選挙に臨めば、「言われているほど議席は減らず、自民、公明両党だけで連立政権を維持できる」(全国紙政治部記者)との見方も広がる。

7年半もの長期政権を築くことを可能にした「国政選挙6連勝」という金バッジにさらに追加できれば、もしも「五輪中止」となろうが、これまで忠誠を尽くしてきた米国のドナルド・トランプ大統領が交代しようが、政権維持は可能との思惑が透けて見える。だから「年内解散」はどうしても譲れない一線であり、そのためには緊急事態宣言の再発出なんてしてはいられないというのである。

安倍総理、あなたは国民を舐めていますか

もはや、多くの人々は気づいているのではないか。安倍総理、あなたはひょっとして国民を舐めているのですか、と。国民がこれだけ困窮している時に自らの延命や政争のことばかり頭にある安倍政権の高官も同じ穴のムジナで、恥を知るべきだ。大体、各国のリーダーたちがコロナ対策の陣頭指揮をとる中、宰相の顔が見えず、この国はすべて自己責任。国家の役割も責任もそこにはない。もはや狂気に満ちていると言っても過言ではないだろう。もし、そうではないと言うならば「年内解散はなし」と公言して国民を安心させたらどうか。

さて、検査が終わり、休養を経て公務に復帰した安倍首相だが、ある自民党幹部は「病状は相当重いそうだ」と話す。この状態でも「総理続行」を決め込んだ安倍政権は「果報は寝て待て」という心境なのかもしれないが、それは国民のためにコロナ対応でやるべきことをやったうえでの話だろう。なにもせず寝ているだけの政権ではなく、国民にこそ良い果報があることを祈らずにはいられない。