実直なリーダーが超優良企業をつくる

ベストセラー『ビジョナリー・カンパニー』(原題『Visionary Company』)およびその続編、『ビジョナリー・カンパニー2』(原題『Good to Great』)の著者ジム・コリンズは、これまで過小評価されているリーダーの経営者としての資質を「究極のプラグマティズム」と表現している。2001年に出された『ビジョナリー・カンパニー2』のもとになった調査は、企業のリーダーに対する「持続可能な方法で根本的な変化をもたらすにはどうするか」という質問から始められた。

「平凡な業績から優秀な業績へと飛躍を遂げ、それを15年間継続できた企業はわずか11社だった」と彼は言う(コリンズは、15年間継続して累積利回りが市場平均と同じかそれ以下で、その後の15年間に少なくとも市場平均の3倍になった企業を探した)。

この11社の変貌の原因は、カリスマ的リーダーシップにあるのだろうか。コリンズの答えは明確にノーである。優良な企業から超優良企業へと飛躍した企業(大手小売りのウォルグリーン、製紙のキンバリー・クラークなど)と、同業種でそれに失敗した企業(大手小売りのエッカードやA&P、製紙のスコット・ペーパーなど)、また優良から超優良へと変貌したものの、それを持続することに失敗した企業 (玩具のハスブロ、樹脂製家庭用品のラバーメイドなど)を比較してみると、優良企業から超優良企業へと飛躍した11社すべてのリーダーたちは、「観賞馬ではなく、耕作馬たち」だったとコリンズは言う。彼らは「粘り強く、意志堅固で、自律的である。人格を鼓舞するよりもむしろ規範に忠実であることをもって導いた。達成したいと望むことを喧伝するために標語やイベントをつくらなかった。大胆な改革の立役者というより、“豆腐”のようであった。つまり、明らかに食事の一部だし、主要な栄養源でさえあるのだが、スパイスは彼らの周囲のすべての人々によって提供された。

「そして、控えめと評されることもあるが、実際は極めて野心的でしかも極めて意志強固だった。だが彼らの野心は、何よりも目標、企業、仕事に向けられていた。そして彼らはその野心を実行に移す意志を持っていた」

「優良から偉大に飛躍した企業のリーダーたちは、会社にとって長期的に何が最善かを見極める際には、究極のプラグマティストだった」とコリンズは言う。「彼らは、レンガを一つひとつ積み重ねながら土台を築くことが偉大な企業への道であると理解していた」。