早ければ数カ月以内に「資産の売却命令」が出てしまう
元徴用工の損害賠償請求訴訟で、日本製鉄(旧新日鉄住金)が8月7日、即時抗告書を提出した。即時抗告したのは、韓国の裁判所=大邱地裁浦項支部=の資産差し押さえの命令決定を差し止めるためである。
「元徴用工」とは戦時中の旧朝鮮半島出身労働者のことで、日本製鉄の訴訟は彼らが日本の企業を相手取って起こした訴訟のひとつだ。2018年10月に韓国大法院(最高裁)が判決を確定させ、日本企業側に賠償を命じたことが徴用工問題の発端となった。
今後、韓国裁判所が即時抗告を認めるかどうかを判断するが、いまのところの見通しでは即時抗告は棄却され、差し押さえが完了する。その結果、早ければ数カ月以内に資産の売却命令が出る。
日本製鉄は「徴用工問題は日韓請求権・経済協力協定によって『完全かつ最終的に解決された』ものと理解している」とするコメントを発表している。
韓国の裁判所は今年6月、日本製鉄の資産に対する差し押さえ命令の決定書を同社が受け取ったとみなす「公示送達」の手続きを取った。その結果、8月4日午前0時(日本時間同)に差し押さえの効力が発生していた。
ぎりぎりになって妥協してくる可能性はないとは言えない
資産の売却命令が出される可能性が濃厚になったからと言ってあわててはならない。沙鴎一歩は昨年11月26日付の記事「失効直前に破棄を取り消す韓国の駄々っ子ぶり」でこう指摘した。
「韓国大統領府は、文在寅大統領も出席して国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、8月に日本に破棄を通行した『日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)』について、失効を回避することを決定し、日本政府に連絡してきた。回避決定は、失効期限(23日午前0時)の6時間前だった。」
GSOMIAの破棄をめぐっては、韓国は土壇場になって折れた。韓国も文大統領も「わがままな駄々っ子」なのである。
徴用工問題でもぎりぎりになって妥協してくる可能性はある。だからこそ、日本政府はあきらめることなく韓国との交渉を続け、その模様をメディアを使って世界に伝え、日本の正当性を国際社会に訴えるべきである。