買収でコロワイドの財務リスクは一気に高まる

こうした状況から、コロワイドのTOBは成功する可能性が高い。ただ、コロワイドも厳しい状況にあり、大戸屋を手に入れたとしても万事順調というわけではない。今回のTOBに投じる71億円とすでに保有する約19%分を合わせると、買収額は100億円程度になる。一方、大戸屋の3月末時点の自己資本は32億円しかない。さらにその後のコロナ禍による収益悪化で減っているとみられる。そのため買収に伴う「のれん」は70億〜80億円になるとみられ、3月末時点でのれんがすでに717億円あり、自己資本が388億円しかないコロワイドの財務リスクは一気に高まる。

なぜリスクを冒してでもTOBを実行しようとしているのか。それは主力業態の居酒屋の宴会需要の低迷に新型コロナの影響が加わり、業績が悪化しているからだ。2020年3月期連結決算(国際会計基準)は、売上高が前期比3.7%減の2353億円、最終損益は64億円の赤字(前期は6億円の黒字)だった。

新たに立ち上げた給食事業に大戸屋を参画させたい

こうしたなかでコロワイドは、今後も厳しさが続くとみられる居酒屋ではなく、それ以外の業態の拡充に力を入れて事態打開を試みようとしている。この戦略において、同社が手がけていない定食店である大戸屋が加わるのは非常に魅力的だろう。

また、新たに立ち上げた給食事業に大戸屋を参画させることを狙っている。健康的なイメージが強く、知名度とブランド力もある大戸屋の食事を介護施設や病院などに提供できれば、市場開拓を進めやすい。こうしたことから、コロワイドはリスクを負ってでも大戸屋を手に入れようとしているのだろう。

はたしてコロワイドの狙い通りにいくのか。行く末を見守りたい。

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