「セントラルキッチンでは品質が低下する」
その後、間を置かずに7月9日、コロワイドは大戸屋にTOBを仕掛けた。7月10日から8月25日に1株3081円で買い付ける。これはTOB発表前日の終値に46%のプレミアムを付けた価格となる。コロワイドはTOBにより、約19%の大戸屋株式の保有割合を最大約51%まで高めて子会社化する狙いだ。
これに対し大戸屋は反対を表明、敵対的TOBへと発展した。大戸屋は「コロワイドの傘下に入ってセントラルキッチンを使うようになれば、店内調理の良さが失われ料理の品質が低下する」などと主張し、激しく反発した。大戸屋は不採算店を閉鎖したり立地・客層によって異なるメニューを提供したりといったやり方で収益を高める考えを示す。
だが、状況は大戸屋に不利だ。コロワイドの買収プレミアムは46%と高い。これは一般的な上乗せ幅よりも大きく、個人株主にとって売却するのに魅力的だ。また、これだけ高値だと、コロワイドのTOBから助けてくれるホワイトナイト(友好的な第三者)が現れないとの見方がもっぱらだ。
大戸屋が示す再建策は“弱い”
さらに、コロワイドが示す再建策に一定の合理性があることも大きい。連結売上高が大戸屋の10倍もあるコロワイドの経営資源を活用できる意味は小さくない。大戸屋のコスト削減に資するとの主張に、納得する人は少なくないのではないか。
一方、大戸屋が示す再建策には抜本的な改善につながるものは見当たらない。「店内調理を守る」を前面に出して株主に訴えているが、こうした情緒的ともいえるアピールで株主の心をつかめるかといえば、難しいと言わざるを得ないだろう。再建策の中身も、不採算店の閉鎖といった当たり前のものが多い。立地・客層で異なるメニューを提供することは目新しいといえば目新しいが、これだと1メニューあたりの食材の使用量が少なくなってしまい、規模のメリットが生かせず逆にコスト増につながりかねない。