検査数が圧倒的なのに「東京問題」なのか

緊急事態宣言解除までのコロナ対応を「第1段階」とするならば、その時点で高い評価を受けていた大阪府の吉村洋文知事や東京都の小池知事はいまだ人気が高く、小池氏は7月5日の都知事選で史上2番目に高い得票で再選した。

まず、この数字を見てほしい。厚生労働省が発表している新型コロナウイルスの「陽性者数とPCR検査実施人数」(1月15日~7月21日)だ。感染者数が最も多い東京都は、この時点で検査人数が14万7314人に上り、陽性者数は9816人。大阪府は5万6462人を検査し、2541人の陽性者数だった。神奈川県は1万5855人に対し、2039人。埼玉県は5万4741人の検査数で1830人の陽性者が確認された。感染の実態を把握し、早期かつピンポイントで対策を講じるためにも「PCR検査数は増やすべきだ」というのは多くのメディアが言っていることで、安倍総理も検査能力の拡充を約束してきた。だが、データを見る限り、検査数は積極的な集団検査などを実施してきた東京都が突出している。

なぜ東京だけがのけ者になるのか

単純に比較することはできないが、仮に全国の道府県で「東京並み」の検査数として厚労省データを計算し直した場合、それぞれの陽性者数はどうなるのか。あくまでも計算上という条件付きであり、厚労省HPにあるとおり各自治体で行った全ての検査結果を反映しているものではないことは付記しておく。その条件下で陽性者数が最も多くなるのは神奈川県で、その数は約1万9000人に上る。次いで千葉県の約8100人、福岡県の約8000人、北海道の約7800人と続く。関西は大阪府が約6600人、兵庫県が約6400人、京都府は約5770人で、最近増加が目立っている愛知県は約6000人となった。上にあるように東京都は9816人である。

東京都は最近、1日4000件を超える検査を実施しており、この数に当てはめて他の道府県の陽性者数を見ると、必ずしも「東京問題」などと言っていられないのが分かるだろう。検査対象として、東京都のように集団検査するのか、症状がある人に医師が必要と判断した場合にのみ検査するのかにも違いはあるが、「本当は陽性者がもっと多くいるけど、検査ができていないから自治体の陽性者数には出てこないだけ」という前提に立つならば、これらの数字は参考になるかもしれない。

繰り返しになるが、上記を見るだけでも「Go Toキャンペーン」で東京都民だけをのけ者にして税金を不公平に投入するだけの理由が見つからない。千葉県にはディズニーランドがあり、神奈川県は箱根という観光客を誘引する魅力的な場所が存在するから除外されなかったらしいが、そんな政府高官のサジ加減一つで公金の使い方が変わってしまうのは良いことなのか。国策としての大キャンペーンに起因した感染拡大が起こる可能性も捨てきれない。それは8月上旬から半ばに明らかになるだろう。