だが、バルドーニが指摘しているように、「上司が度量の広い人で、あなたと良好な関係にある場合には、あなたには上司に率直に伝える義務がある」。どんな人に対してでもそうだが、意見するときは、相手に好意を示しながらでなくてはいけない。仕事のうえで何らかの対立があったとしても、「それでも上司の役に立ちたい」という気持ちが批判的な感情を上回っていなければならないのだ。

上司といい関係を築いていたとしても、求められていない意見をするのは賢明ではない。

「よりよい上司になるにはどうすればよいかというアドバイスは、求められない限り与えにくい」とデタートも言う。

理想を言えば、上司のほうからアドバイスを求めてきて、どのような意見が役に立つかを明確に伝えてくれるのが望ましい。上司が部下に、自分はどの分野で能力を伸ばす必要があるかを打ち明け、直したいところがあるのでよく見ていてくれと頼むのはありうることだ。

「理想的に言うと、意見した部下が不利益をこうむらないようにするのが正しい上司のあり方である」とバルドーニは言う。

だが、バルドーニ自身が認めているように、現実世界では必ずしもそんな上司ばかりとは限らない。むしろそうなる可能性は決して高くないといっていいほどだ。

上司が直接意見を求めてこない場合には、何らかの意見が必要ありませんかと尋ねてみてもよい。やりやすいのは、新しいプロジェクトや新しいクライアントに関してのことだ。

「このプロジェクトの要所要所で私の感想をお伝えすれば、仕事のお役に立つのではないでしょうか」とか、「私はうちの部がやっていることを独自の視点でとらえられるかもしれません。プロジェクトの進行状況についての助言は必要ありませんか」というような問い方をすればよいだろう。

これらの質問も、純然たる好意を持って行うことが前提である。上司は職務の一環として部下に査定を下すのだから、部下である自分はそのお返しとして上司を評価したがっているような印象を与えてはならない。あくまで上司の手助けをしたいのだという気持ちをはっきり見せよう。