人口が減ることは悪いことか?

確かに国の経済成長という全体論で考えると、人口減少することでGDPとしてのトータルの値は減少するでしょう。これまでの内需主導型経済からの転換も余儀なくされます。しかし、同時に人口増加社会の悩みのタネの解消されることもまた、事実なのです。

その1つは「過密の解消」です。日本の国土は急峻で国土の67%が森林で、可住地面積は約10万3500平方キロメートルとなり、国土面積で見た場合の「北海道+鹿児島県+岐阜県」くらいのサイズです。このサイズの島に人口増加が続けば、人口過密の問題は物理的に深刻化します。一人あたりが持てるパーソナルスペースは極小化が続くことで、ストレスもかなりのものです。この過密の解消が人口減少で自然解消します。

また、人口減少で日本全体的な経済成長が低下しても、国民一人あたりの労働生産性はむしろ高まる可能性があります。そしてこの傾向は人工知能が単純労働を代替し、よりクリエーティビティや高い労働生産性が求められる、これからの新たな時代で迎合されるべき傾向と見る専門家もいるのです。

日本がこれから受ける“痛み”

なぜ、人口減少が労働生産性を高めるかというと、強制的に構造の改革を迫られるからです。エコノミストの原田泰氏の論文によると、労働力人口増加率の低い国もしくは減少している国ほど、労働生産性の伸び率が高いとあります。限られた労働力のリソースを節約するための技術革新やノウハウが促進されることで、より付加価値の高いビジネスへと誘引されるからです。

現在は人口を多く抱える内需主導型経済を前提として、ビジネス取引が行われています。ここから大きく構造転換が起こる「痛み」はあるでしょう。しかしながら、人口減少の問題は日本に限った話ではありませんから、見方を変えればいち早くこの少子高齢化、人口減少における有効なデータを蓄積し、対応を行うことでビジネスチャンスにつなげられる可能性もあります。

日本人が中国へ出稼ぎにいく未来

しかし、お隣中国の存在を加味すると、日本の人口減少の本格化が懸念事項の可能性を帯びてきます。

現在は日本で多くの「外国人」がコンビニ店員などの労働力になっています。とりわけ、中国人は全体の3割を占めます。経済学者の野口悠紀雄氏によると、今後一人あたりの豊かさが日中逆転することで、人の流れも逆転する可能性があるというのです。

現在のところ、日本に来ている労働を目的として来日する外国人は、自国より豊かな経済力、労働市場における就労機会にメリット感じて来日をしていると推測されます。しかしながら、このまま日本が少子高齢化を続けて、大きな労働生産性の高まりが実現できず、一方で中国の経済成長が続いて一人あたりの豊かさで追い抜かれたとき、今とは逆に日本人が中国へ出稼ぎにいくという未来が来る可能性があるというのです。