教員に対しても「前科の有無」を確認している
GAMは保育所や学童保育のほか、未成年を対象とする校外クラブ活動やサマーキャンプなども包摂し、運営責任者の認可先自治体への事前申請をオンラインで行えるもの。そこで保育・指導スタッフの氏名・生年月日・保有資格を登録すると、同時・自動的に、FIJAISVと前科調書の閲覧申し込みがされる仕組みだ。
FIJAISVリストに記載があったり、犯罪歴があれば、司法省から運営責任者にアラートが送られる。その閲覧結果はオンライン上で共有され、前科者はブラックリスト化される。前科者が土地を変えても、フランス国内である限り、未成年関連職からキックアウトできるシステムだ。
未成年関連職への就業を不可能とする欠格事由(犯罪)は、殺人・強姦・誘拐・銃刀窃盗・森林放火・尊厳毀損・未成年搾取・性的加害・麻薬取引・詐欺・背信・ゆすり。他件でも、執行猶予なし・拘禁刑2カ月以上の有罪判決が降った場合は欠格事由となる。
2016年には性犯罪者データベースと前科調書の連携チェックが、国家教育省採用の教員にも適用されることになった。これは採用時だけではなく、すでに教職にある人々も対象となる。万一前科が確認された場合はすぐ停職処分となるが、その後職務を再開できるか否かは、前科の内容や来歴、時期を検証され、ケース・バイ・ケースで判断されることとなっている(出典:フランス国家教育省官報)。
取扱注意の司法情報をデータベース化して、前科者排除の網を張る目的は、ひたすら「子どもの安全確保」にある。個人情報保護の懸念とは、閲覧範囲を「未成年関連職」に限定することで折り合いをつけつつ、優先すべきは「子どもの安全」と、国が明確に意思表示しているのだ。
ただし「初犯」を防ぐのは難しい
前科調書や性犯罪有罪者データベースを駆使したフランスの制度は、再犯防止には大いに有効だ。しかしそれでも、初犯を防ぐのは難しい。児童が被害者である場合、事態が明るみに出るのに時間がかかることもある。
例えば2017年、公立学童保育で勤務していた有資格者の30代男性が突如逮捕された。その前年に個人シッターをしていた際、3歳~7歳の男児8名に犯した性加害が判明したためだ。拘禁刑5年、その後の社会司法監視7年、精神治療1年の有罪判決が下った。シッター関連ではその他にも、フランスのNo.1売買サイト「ボンコワン」経由で個人的に受注していた男性(28歳)が、6歳と4歳の女児2名への性加害で逮捕。拘禁刑5年、その後の社会司法監視10年、慰謝料支払いの有罪判決を受けた。
両者は当然前述のデータベースに記録されたが、彼らに被害を受けてしまった子どもたちの経験と記憶は、消すことができない。筆者の周囲でも、19歳で学童保育に就職した直後に4歳女児に性加害をし、逮捕された青年の例がある。彼は勤務態度も真面目と評価されており、勤務先の学童保育も評判の良いところだったが、それでも犯罪は発生してしまった。