もちろん「提出をしない権利」はある

第三証明書はシッター職のほか、銀行など金融関係の求職の際も提出が求められる。取り寄せ自体は容易だが、個人情報として保護されており、第三者による取得は法律違反で7500ユーロの罰金が課される。言い換えれば求職者は「提出をしない権利」もあるわけだ。その場合雇用をする側には、求職者の前科を確認する手段がなくなってしまうのだが……。

「その時は《提出しない》ということが、一つの判断基準になりますね」

司法省の前科調書担当は、筆者の疑問にそう答えた。

「前科調書の提出はごく一般的で、取り寄せもネットですぐにできます。信用問題として頼まれたことをしないのは、なぜなのか。保護者の側も、そこで考えてもらえればいいのでは」

前科調書の内容以前に、まずその調書を見せるか否かの姿勢を、判断材料にできるというわけだ。

この考え方はマッチングサイトや派遣会社などの関連ビジネスでも共通しており、派遣会社は前科調書による無犯罪歴確認を採用条件にしている。マッチングサイトでも評判の良いところは、前科調書提出の可・不可がプロフィール項目にあり、検索時点で確認できる。登録者が学生バイトであっても同様だ。シッター職を求める際の身分証明の条件として「前科の有無」が、必須項目と認められているのだ。

シッター業以外では、雇用者が前歴を確認できる

それでもシッター業は、前科確認が「任意」となっている分、他の保育関連職よりも網の目が粗い。他の未成年職では、前述のように資格・認可が必要であることに加え、求職者の意思に関わらず、雇用者側が前歴確認をする制度が整えてられているからだ。

犯罪前科者の未成年関連職からの排除が強化されたのは、2000年代前半から。まず2004年、未成年関連職の事業者が前科調書の第二証明書を閲覧できるようになった(それまではシッター職と同様、第三証明書の任意提出で対応していた)。

続いて2005年、性犯罪有罪者の履歴・現住所を明示するデータベースFIJAIS(現在の名称はFIJAISV)が運用を開始し、役所の児童関係局が性犯罪有罪者の所在を把握できるようになる。4年後の2009年には、そのデータベースと前科調書第二証明が、未成年関連事業の全国ポータルサイトGAMと連携された。