ベビーシッターの大手マッチングサイト「キッズライン」の2人の登録シッターが、業務中に子供の下半身を触ったとして強制わいせつの疑いで相次いで逮捕された。海外ではどのような対策をしているのか。フランス在住ライターの髙崎順子さんは「フランスではシッター契約をする前に前科の有無を確認する。日本でもそうした仕組みを整えるべきだ」という――。
彼女の鮮やかな少女
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性犯罪を繰り返す人がシッターになれてしまう日本

ベビーシッターと利用者のマッチングサイト「キッズライン」で、男性シッター2人による強制わいせつ事件が起きた。2019年11月に男児の下半身を触ったとして2020年4月に橋本晃典容疑者が逮捕、5月に女児の下半身を触ったとして荒井健容疑者が6月に逮捕された。

キッズラインは6月から男性シッターのサービスを「一時停止」したが、いまだに容疑者の名前や具体的な容疑内容を明らかにしていない。また報道があるまで、利用者や登録者への周知も行われなかった。一連の対応は多くの専門家が問題視している。

特に問題視されているのは、橋本容疑者の性加害がすぐにキッズライン社から利用者に周知されず、明確な対策も講じられなかったことだ。その後キッズラインでは別の登録シッターが性加害を行い、橋本容疑者は別件の強制性交等の疑いで逮捕され、累犯者となった。

性犯罪は累犯者が多い。そのためイギリスをはじめベビーシッターの利用が多い諸外国では、シッターが求職の際、その犯罪歴を確認される制度がある。そして性犯罪などの前科者は、シッター以外にも学校や放課後学童クラブなど児童関連職への就業が禁じられている。もし日本にもそのような犯罪歴確認とキックアウトのシステムがあれば、キッズライン事件以外の案件でも、防げた性被害は間違いなくあっただろう。

※編集部註:初出時、橋本容疑者の加害について正確さを欠く記載があったため、上記段落を訂正いたしました。(7月25日10時00分追記)

日本はこの点で残念ながら、かなり後れている。そのため今日も、性犯罪の累犯者が子どもに関わる職に自由に就け、放置されている。子どもたちが危険に晒される状況が続いているのだ。

フランスのシッターも無資格・無認可だが…

筆者の住むフランスでも、シッター利用は一般的だ。3歳未満の子ども220万人のうち、約4万6000人が自宅でシッター保育を受けているというデータがある(出典:フランス乳幼児保育報告書2019年版)。個人雇用のシッターは契約内容の自由度が高く、親の働き方や子の心身の特性など、個別のニーズに合わせて保育内容を柔軟に決められるのがメリットだ。 

そしてフランスでは日本と同様、ベビーシッターは資格があってもなくても従事できる職業だ。フランスの保育業界は保育所も保育ママも全て認可制で、シッターは例外的な存在と言える。またその雇用市場において、派遣企業とマッチングサイトが主な仲介役を果たしている点も、日仏では共通している。

しかしその運用に際しては、大きな違いがある。