ポイントは、まず1日6000歩以上歩き、週5日以上着用するという条件をクリアしないと、効果は得られないということ。加えて、明確な効果を得るためにはきちんとした穿き方が重要という点だ。ワコール社内では「ガードル穿き」と呼んでいるそうだが、ガードルを着けたことのない男性にとってこのきつめの下着は穿き方をきちんと知って、股間、ヒップ、太ももの位置に正しく配置しないと十分な効果が得られず、快適性も損なってしまうという点だ。

メンズインナー部では、これらのポイントをパンフレット、インターネット、そして包装パッケージなどで詳しく説明し、情報普及に成功した。この商品のターゲットである男性消費者は、説明やうんちくが非常に好きなのだ。それゆえ、女性に比べて、説明文をよく読んでもらえたそうである。その結果、同社が戦略的に意図した「知っていただいて、理解をしていただいて、着用していただいて、実感していただく」(細川氏)、というプロセスを経て男性消費者は満足感を獲得できたのである。

また、女性消費者との購買行動の違いに関して興味深い話がある。同社の統計によると、女性消費者の場合、「おなかウォーカー」「ヒップウォーカー」を発売した際に、ほとんどの人が一枚買いだったそうだ。とりあえずトライアルしてからということなのだろう。

ところが、男性消費者の場合は発売時から、3000円以上という高価格帯の商品にもかかわらず、2枚、3枚まとめて買う人が非常に多かったという(ちなみに筆者もそうだ)。これは男性が感性的な女性と異なり、計画的だからと思われる。週5日以上穿かなければ効果がないといわれたならば、洗濯の必要性から最低でも2、3枚はないと継続使用ができないと即考えるのだ。

男性消費者はこれまで下着の購買において、女性のような「本人購買」はほとんど見られなかった。が、ひとたび商品の効果を知り、理解すれば、あれこれ目移りすることなくまとめて、そして継続的に「本人購買」する可能性が高い。このような男性消費者の購買性向を喝破し、時流を捉えた高付加価値商品をつくり上げ、詳細なコミュニケーション活動を展開することでタブーを打ち破る購買スタイルを編み出したワコールに、筆者は惜しみない拍手を送りたい。

※すべて雑誌掲載当時