効果を得るための「ガードル穿き」を徹底的に啓蒙

このような時代のトレンドをつかんで、細川氏らマーケティング・サイドがメンズでもスタイルサイエンス商品に取り組んでみたい、と手を挙げたのだ。そして同社の人間科学研究所に男性のモニタリングと、データの収集を依頼したのだった。

人体に関する画期的な分析装置や計測法を考案し、同社の優れた商品開発のバックボーンになっている人間科学研究所では、早速多数のモニターを使った実験や数値の測定に着手した。そして、歩幅が広くなって、自然にエクササイズになるというクロスウォーカーの心臓部に当たるクロス構造の開発に成功した。

この新商品の効果については、ワコールから数字が公表されている。それによると、89%の被験者に体脂肪率の減少が見られ、77%の被験者で腹囲の減少が見られたそうだ(週5日以上この下着を着用した同社の44名の社員を3カ月間モニタリングした結果)。つまり、「カッコ良くなれる」という科学的証拠がそろい、潜在市場性の高いプロトタイプができ、「本人購買」へと誘引する下地が整ったのだ。

ここからはいよいよマーケティングの出番となる。実際の市場化にあたってはメンズインナー部がデザイン、カラー、ブランド、価格等の設定、そしてコミュニケーション活動を担当した。

クロスウォーカーのようなこれまでメンズインナー市場に存在しなかった革新的商品の場合、とりわけ重要なのがコミュニケーション活動だ。この商品の場合、「効果」が「本人購買」を引き起こす重要なファクターになる。それゆえメンズインナー部では、男性消費者に効果を実感してもらうための前提条件の周知に心を砕いたという。