オンライン、医療・健康、代替エネルギーに高い将来性
――現在の転職市場の状況について教えてください。
現段階では多くのキャリアを求める人たちにとって、予想しているよりもはるかに長く、困難を伴う局面が続くと考えています。企業には景気に対する大きな恐怖心があり、人員削減の手も深いところまで伸びてきています。とりわけ日本に多く見られる傾向として、いわゆる中間管理職などの“ジェネラリスト的な人材”の転職が困難になっています。現実に企業から解雇されているのもそうした人が多く、彼らには年単位で厳しい状況が続くかもしれません。
――対して評価されているのはどのような人々なのでしょうか。
景気の悪化局面において、企業は業務遂行のためのスキルを持つ人たちを強く求めます。業界単位の特色としては、これまで評価がさほど高くなかった科学・化学分野のスペシャリストの価値が高まってきています。またeコマースや外為取引も含むオンラインバンキングなどの企業にも求人があります。オンライン、医療・健康、代替エネルギーが人材業界にとって将来性の高い三本の柱でしょう。
――御社のバンキング部門はどのような状況ですか。
破綻したリーマン・ブラザーズに限らず、ほぼすべての投資銀行の社員から相談がきています。背景にあるのは銀行の実務における状況ではなく、株主の声でしょう。リストラ策を求める声に応じて削減人数も決まってくるからです。一方、それらの人材を狙うベンチャー企業もあります。例えば株式公開をする際、以前であれば投資銀行を顧問に雇って達成した。今はそのノウハウを持つ人材を社内に抱えることができる。つまりこれまで手に入れることのできなかった“スキルセット”を社内にとり込むチャンスでもあるのです。
――市場の回復の兆しはどこから生まれると考えていますか。
回復局面に役立つイノベーションの力が、国内には多く内蔵されていると思います。そこを起点に回復を主導していければ、雇用もまたそれらの部分から生まれてくるはずです。