企業が求めるのは一つの分野で「自走できる人」
――今、転職をしようとする人たちへのアドバイスとして、どのようなことがいえるでしょう。
不景気をあえてチャンスとして考えた場合、先入観なく企業を見ていく姿勢が大切です。例えば、ここ数年の間に知名度の低さゆえに人材を確保できなかった企業の中には、技術や新しい発想を持つとてもいい会社がたくさんあります。それを経営者の発言などにも注目して見極めていく。不況という状況では、経営者の舵取りによって経営の盛衰が決まってくるものです。芽を吹きつつある企業を丹念に探していくことです。
――面接などでの自己アピールの方法で、意識すべきことはありますか。
企業は社員へのトレーニングに対して、人的パワーやコストをかける余裕がありません。よってある一つの分野で自走できる力、さらには周囲に影響を与えながら走れるという力を見せられるかどうか。自分の守備範囲や役割を狭く捉えすぎず、周囲を見渡せることをアピールできるかどうかが決め手になると思います。逆にいえば、「頑張ります」「何でも教えてください」「いろいろ吸収していきます」的な言葉に対して、企業はあまり興味を持っていないということになります。
――その中で今後、御社が模索していく方向性は。
まだ確かなことはいえませんが、現在の不況から再成長期を迎えるとき、新しいパラダイムが始まるかもしれません。
例えばエグゼクティブ・クラス、経営幹部のクラスで大きなリストラが起こった場合、スキルの高いベテランの人たちが一気に市場に出てくることになります。これまで人材紹介サービスに若手人材の調整機能があったのと同じように、経営層や経営幹部層により多くの需要が生まれるかもしれません。「エグゼクティブサーチ」といわれているような業態・業界が、今よりも裾野を広げていく可能性を秘めている。業界全体が担う役割としては、得意分野や強い特色を打ち出すといった、より品質の高いサービスとなっていく必要があると考えています。
(伊藤菜衣子=撮影)