ウェブ面接時に「目線が時折上を向く」学生のけしらない理由
コロナ前は人手不足と騒がれ、企業は早期獲得を目指し、前年夏のインターンシップを皮切りに学生を囲い込み、それ以降は花火大会、工場や施設見学、その後の宴会と、学生をつなぎ止めるために必死の“接待”を繰り返してきた。
学生の側も売り手市場ということもあり、過去の先輩たちがそうであったように多くの学生が無理することなくどこかの企業に入社できるだろうと高をくくっていた。
しかし、今年の5月以降の面接では企業側の微妙な変化も起きている。広告業の人事部長はウェブ面接での風景をこう語る。
「面接をしていると、学生の目線が時折上を向くことがある。じつはPCの画面の上にカンペ(カンニングペーパー)を用意して話しているのがよくわかる。対面の面接だと紙を見て話せないので、志望動機などについて丸暗記して面接に臨むのが普通。ウェブだとそれをする必要がないが、面接官の中にはカンペを見ているな、とわかると『何だ、こいつは』と、減点する人もいる。私としては、安倍首相もカンペを見てしゃべっているだから、そこまで目くじらを立てなくてもと思うのだが」
初めてのウェブ面接とはいえ、学生の甘さと面接官の強気の姿勢がうかがえるエピソードだ。
「Wi-Fiの調子が悪くて……」「その時間は他社面接が入ってます」
一方、サービス業の人事部長は「面接をなめている学生が1割はいる」と語る。
「こちらは5人の面接官が5分前からスタンバイしているのに、時間になってもなかなか学生が入ってこない。ギリギリで入ってきたが、第一声が『どうも~』。さらに学生は途中で落ちてしまう。理由を聞くと『Wi-Fiの調子が悪くて入れません』。こちらが『次の方がいるので、それが終わり次第、再接続してください』と言うと『その時間は他社の面接が入っています』。こういう学生は珍しくない」
同社はすでに業績悪化を見込んで中途採用を中止している。21年卒の採用数は当初予定通りだが、仮に内定辞退が発生し、予定数に満たなくても2次募集はしないという。企業の姿勢はコロナ前と違って、明らかに強気の姿勢に一転している。