最近よく“弁当男子”なる言葉を耳にする。つまり、弁当持参の独身男性社員のことだが、おかずもそれなりに充実している。これまで、若い人の一人暮らしというと、食生活には手をかけないというイメージが強かった。ところが、意外にも食事や料理に対して前向きに取り組んでいる人たちが増えているのだ。
そのことは、味の素が先頃発表した「若年未婚者調査」からも読み取れる。調査対象は首都圏と京阪神の20~40代の未婚男女約8000人。彼らに1カ月間で夕食を自炊する回数を聞いたところ、なんと40代男性でも「週に4日以上」が42%にのぼった。
この背景には、長引く不況下での生活防衛があることは間違いない。同社広報・CSR部の藤井俊樹生活者情報担当部長は「ひと月に使う食費が少ない人ほど自炊の回数は多い。フリーズドライのスープを利用した雑炊といったインスタント食品と市販食材の“合わせ技”が目立つ」という。
一方、彼らを当て込んだ家電品も好調だ。例えば三洋電機がこの1月に発売した3合炊きのマイコン炊飯器「ビタ・キューブ」。同社広報部の寺嶋秀市氏は「単身者の部屋に合わせたインテリア風のデザインが受け、毎月1割ずつ販売数量が伸びている」と話す。
未婚の単身者の数は推計で500万人前後。このように、食品の加工度と調理器具が進歩することの相乗効果が生まれれば、自炊派はさらに増えていき、それに合わせたマーケティングの余地も広がっていくだろう。
(ライヴ・アート=図版作成)