子どもが絵本を好きになるためには、どうすればいいのか。明治大学文学部の齋藤孝教授は「幼児期は自分で読ませるのではなく、読み聞かせるほうがいい。そのときには、映像をイメージできるように読むことが大切だ」という――。

※本稿は、齋藤孝『1日15分の読み聞かせが本当に頭のいい子を育てる』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

就寝時間の物語のようななだめるような何も
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読み聞かせてこそ、心を育てる教材になる

幼児期の子どもにとって、すぐれた絵本は最良の教材です。でも、ただ子どもに絵本を与えて「読みなさい」ではあまり役に立ちません。親御さんが子どもに読んであげることで、子どもは楽しみながら絵本の世界に入り込むことができます。読んでもらうことで、子どもは絵本にちりばめられた言葉と出会い、それが豊かな心を育んでいくのです。

文字を覚えるのも、ひとりで読めるようになるのも、もう少し先のことで大丈夫です。 何よりも大事なのは、「絵本を読んでもらうと楽しい」と子どもが思うこと。絵本を通じて、親子で楽しい時間を共有することです。

絵本は、子どもにひとりで読ませるものではありません。「自力で読ませるほうが子どものため」というのは、親が楽をするための言い訳でしかありません。

ひとりで絵本を読む時期はやがてきます。それまでは絵本は、お母さんやお父さんが読み聞かせてこそ、子どもの心を育てる教材として無限の力を発揮するのです。

子どもを「半分なりきり、半分客観」に導く

絵本の登場人物に“なりきる”ことで、子どもの心が育つというのは、すでに申し上げたとおりです。

ただ、完全に100%主人公になりきってしまうよりも、半分は「自分自身が残っている」という状態で絵本に向き合うほうが、子どもの成長にとってより効果的です。

たとえば、ネズミが主人公の絵本の場合、子どもはまずネズミになりきることで物語に没入しています。そこでネズミに困難が降りかかってピンチが訪れたとしましょう。このとき100%ネズミになりきっていると、子どももネズミといっしょに「ああ困った」「どうしよう」とドキドキします。それはそれでいいことなのですが、このとき子どものなかに「自分」が半分残っていると、「ネズミさんが困っている。助けてあげたいな」という気持ちも芽生えてきます。つまり、ネズミを客観視して、自分がネズミを「助けてあげたい」と思うわけです。