美しい絵が、子どものイメージ世界を広げる
昔は、絵本があまり普及していなくても、その代わりに、大人やお年寄りたちがみな知識豊富で“語るべき昔話”を知っていました。各家庭に、水木さんの「のんのんばあ」や 『銀の匙』の伯母さんのような“語り部”がいました。その人たちが、子どもや孫の世代に昔話を語り聞かせてくれたのです。
柳田國男の『遠野物語』に記録された物語も、語られたものです。
今の時代、さすがに昔話や民話や童話を暗唱して語り聞かせたり、百人一首を光景が想像できるようにそらんじたりできる大人は多くないと思います。
でも心配はいりません。だからこその絵本の読み聞かせなのです。
絵本の読み聞かせには、昔の語り聞かせにないよさもあります。絵本に欠かせない美しい絵は、子どもの色彩感覚や美的感性を育てるだけでなく、視覚に訴えることで子どものイメージ世界を広げるサポートにもなります。
時代が「お話しして」から「絵本読んで」に変わっただけ。
夜寝る前に大人が子どもに昔話をしてあげる「語り聞かせ」が、今では絵本を通じて行われている。親御さんにとっても、お子さんにとっても、絵本には大きな可能性が秘められているのです。
子どもはまだ「頭の中で映像化」が苦手
“喜劇王”として名高いイギリスの俳優・映画監督、チャールズ・チャップリン。彼が「モダン・タイムス」「街の灯」「独裁者」などに代表される、数々の感性豊かな作品を生みだし続けることができたのは、お母さんの影響が大きいといわれています。
舞台女優だった母・ハンナは、子どもたちに普段の会話でも、話題に上った人物になりきったり、状況に合わせて情感を込めて話したりしていたといいます。また、自分が舞台で演じた役や、歌った曲などをよく子どもたちに見せていたともいわれます。
そんな母・ハンナの情感あふれた子どもとの接し方が、後に世界的な巨匠となったチャップリンの感性の土台を育てたのではないでしょうか。
大人が本を読むときは文字を追い、言葉の意味を考えながら映像をイメージします。
でも、言葉をまだよく知らない子どもは、自分で文字を読んで、その言葉からすぐに映像をイメージするという作業に慣れておらず、上手にできません。
ですから、子どもが頭のなかで場面や状況をイメージしやすいよう読んであげることが大事です。