④人より「一段深く」まで調べる

まずはなんでも疑問に思ったら、「一段深く」考え、そして調べましょう。今は調べるのがとっても楽ちんです。スマートフォンに向かって話しかければ、大概のことはわかります。

このYKK記事でも、自分の疑問点をいろいろ調べてみました。

8年前の記事ではどう取りあげられていたのか? YKK経営陣の発言はどう変わったのか? 事業環境は本当に変わったのか? ファストファッションの売上の伸びは? YKKによるボリュームゾーン攻略はなぜこれまで(15年間も)失敗し続けてきたのか? 今回の対応はこれまでと何が違うのか? インディテックス(ZARA)やH&Mのデザインから店舗納入までのタイムスケジュールはどうか?

答えにつながる情報がある場合も、そうでない場合もありました。まずはそれで十分です。ネットなどに情報がなくとも、それで「簡単にはわからないことなんだ」ということがわかりますから。

それでも知りたければ、もう少し粘ります。

Wikipediaで英語版の頁を読んでみたり、Google検索で20頁目くらいまで読み込んでみたり、「-(マイナス)」記号を使うことで検索結果の絞り込みを行ったり。たまには、知っていそうな人に質問したりもします。本当はこれがもっとも効果的・効率的で迅速です。

ただし、業界関係者や当事者だと当然、発言内容にバイアスがかかるので注意が必要です。この「知っていそうな人に聞く作戦」を、よく使うのは長女です。私をよく、質問箱代わりに使います。私も素直に答えを教えず、もっと難しい(でも楽しい)質問にして返したりしますけれど(笑)

人より一段だけ深くまで調べることで、意外に面白い情報に行き当たります。

⑤得たものはちょっと「抽象化」して考える・覚える

記事の中で、一番私が面白いと思ったのは次のくだりです。さすがのYKKも、かなり苦労している様子です。

・ファストファッションにもYKKが選ばれるようになってきた
・だが、管理システムが短納期に対応できていなかった
・従来のシステムは、1つの生産工程に1日かかることを前提としていたが、ファストファッションの納期に対応するには、1時間単位で工程を管理する必要がある
・当初は専用ラインをつくり、人海戦術で乗り切った
・新システムの導入計画は3度も延期され、1年遅れで導入予定

これを「抽象化」すると、組織が持つ「固有タクトタイム」の問題、ということになるでしょうか。

タクトタイムというのは生産工程における概念で、流れ作業のラインが何分で次の工程に動くかを示します。なので全工程で同じです。

全工程とも、ひとりの指揮者のタクトに従って、次の工程に仕掛品(生産途中の製品)を渡すのです。

仮にファスナーの生産工程が、材料生産から完成品チェックまで10工程あるとしましょう。

各々の工程がどんなに頑張って素早く(たとえば1時間で!)仕上げたとしても、タクトタイムは1日なので次の日までは、次の工程の作業が始まることはありません。結局、最短でも生産には10日間かかることになります。これでファストファッション対応などできるわけがありません。

でもそれを1時間単位にすることが、恐ろしく大変そうであることが、記事からは伺えます。新システムの導入は3度も延期されていると。