禁じられると逆にやりたくなる
「してはダメ」という禁止の情報が入ると、人は「自由に行動を選択したいという欲求」が阻害され、ストレスを感じます。
すると今度はそれを均衡状態に戻したいという欲求が働き、禁止事項をどうしてもしたくなってくるというわけです。
このような「正常性バイアス」や「カリギュラ効果」といった心理傾向がある一方で、私たちには「有害なものは避けたい」という強い欲求も存在します。そのため「悪い結果になる」と予見できていれば、自然と自由に行動したい欲求を抑えられるようになります。
童話「鶴の恩返し」でも、「部屋を覗いたら鶴がいなくなってしまう」という結果をおじいさんとおばあさんがあらかじめわかっていれば、「覗きたい」という欲求を抑えることができたのかもしれません。
このように、行動の先にあるネガティブな結果をリアルに想像できれば、危険回避欲求のほうが勝り、行動を抑制することができます。
ただし、自動車教習所で見る交通事故映像のように、危険回避のために起こる刺激は、時の経過によって薄れてしまうこともあるので、繰り返し注意喚起する必要があります。
新しい時代へ生まれ変わるとき
今後も自然災害やウイルスの脅威と共存していく私たち。非常時には「真面目で働き者」といった日本人の美徳がかえってマイナスに働いてしまうことがあります。新型コロナウイルスが拡大するなか、無理して出勤してしまったがために事が大きくなってしまったという事例も、多々聞こえてきました。
一方で、在宅勤務が増え、仕事の合理化、スリム化が急速に進み、働き方だけでなく働く人の価値観も見直されるようになりました。ポツッと電子機器のスイッチを切れば、瞬時にプライベート空間に切り替わるワークスタイルが拡大し、ビジネスシーンでは合理化、スリム化が進んでいきます。
このような時代では、自社のカルチャーだけではなく、社会全体の状況や変化を瞬時に捉え、合理的な賢い指示や行動をしていく力がより重要になっていくでしょう。
技術的にはもうだいぶ前から可能であった、新しいビジネスシーン・価値観が、実はもう始まっています。災害には社会をガラッと大きく変える力があります。そして、その適応が新たな課題になることでしょう。