台風や地震などの自然災害、そして世界中で猛威を振るう感染症の脅威。私たちの生活を脅かす緊急事態に陥ったとき、人はどんな心理状況に陥るのか。災害心理学の専門家に話を聞いた。
スーパーマーケットで買い物をする保護マスクを身に着けている成熟した女性の肖像画
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「念のため」はデマ拡散のトリガー

私たちの心は、自分や自分の生活を脅かす可能性のある事柄について、既知でも未知でも「恐ろしい」と感じるようにできています。

台風や地震などの自然災害や、いま世界が苦境に立たされている新型コロナウイルスの大流行、また、近いうちに大地震が起こるとされているなど、生活で感じる恐怖がゼロになることはありません。

未経験の非常事態であっても「もしも現実になったら大変だ」と想像しただけで「怖いな」「心配だな」と思いますよね。息苦しさや動悸など、身体的な不快感を伴うこともあり、リラックスした気持ちは低減します。が、その代わりに「回避するための行動を起こしやすくなる」というメリットが生まれます。

ウイルスにしても大地震にしても、想像だけで怖さや不安を感じることができれば、未経験で不確かなことであっても、「リスクへの準備をしたい」という意欲が高まります。

恐怖やストレスを感じたときには、無理にリラックスしようとせず、「必要な準備」をしてみるといいかもしれません。例えば、地震に備えて食器戸棚に耐震用の道具を取り付けるなど、合理的な「備える行動」を起こしてみる。すると、「必要な手段を施した」という事実が安心材料となり、リラックスできるようになります。