検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案の扱いで与野党が激突している。法案の狙いは、安倍内閣お気に入りの黒川弘務・東京高検検事長を定年延長させた荒技を追認し、今後同様の人事を「合法的」に行えるようにすることだ。この法案に問題があるのは論をまたないが、担当大臣として国会で答弁に立つ武田良太・行政改革担当相の迷走ぶりがすごいのだ――。
「私は法務省の職員ではありませんので」
13日午前9時すぎ。衆院内閣委員会が開かれた。テレビ中継されることが多い予算委などと違い、内閣委が注目を集めるのは珍しいが、この日は野党出席のもと「悪名高い」検察庁法改正案の質疑が行われるということで緊張は高まっていた。
野党側から今井雅人氏が質問に立つ。
「検察官の勤務の延長を今、ここで決めなければいけない緊要性は一体どこにあるのか」
これに対する武田氏の答弁を聞いて一同、あぜんとした。
「法務省の関係部局でいろいろなことが審議されたんだと思います。(中略)その変遷については、私は法務省の職員ではありませんので、そうしたことを口を挟む立場にはないわけでありますけれど」
正直に本音を語ったという見方もできるが…
今回の法案は「束ね法案」と呼ばれる形式だ。束ね法案とは、関連のある複数の法案を一括して審議するというもの。今回は国家公務員の定年を延長する内容の法案を10本束ねて国会に提出されている。問題の検察庁法改正案は、この中にある。
武田氏は行革担当相として、10本の法案をとりまとめて提出する責任者ではある。しかし、法務省所管の検察庁法の改正については、武田氏も広い意味での「担当」ではあるが、内容について熟知しているわけではない。
だから武田氏は「私は法務省の職員ではない」「口を挟む立場にはない」という趣旨の答弁を繰り返したのだ。ある意味で正直に本音を語ったという見方もできる。ただし、こういう発言は、口が裂けても言ってはいけなかった。