日本の強さ、医療現場にも

コロナショックでインバウンド業界は特にダメージが大きく、旅行の需要は戻りにくいと言われています。が、インバウンド最大級のマーケットである中国人が、日本に旅行したいと思っている事実は日本経済にとって朗報でしょう。ただし、需要はあっても、受け入れることができなければ消費は生まれません。水際対策として外国人の入国を拒否する措置が続いていますが、入国制限をいつ解除するのか、感染拡大防止と経済の入り口を開けるタイミングとのバランスをとるのが非常に難しいのが現状です。中国人の日本旅行のマインドが冷めないうちに、インバウンド需要を取り込むべく、国による出口戦略に期待が寄せられます。

さて、英国の医療人材派遣会社IDメディカル社による2019年度の医療制度ランキングでは、医療費(GDP比)、病院ベッド数、医師数、看護師数、平均余命など医療に関する指標を数値化してランキング化した結果、日本が1位となっています。

質が高く、経済格差の溝が浅い

新型コロナウイルスをめぐっては、全米各地で黒人の死亡率が高いことが報告されています。英BBCによると、イリノイ州シカゴでは人口の約30%が黒人であるものの、死者に占める割合は70%に達しています。イリノイ州全域では、黒人の比率が14%であるものの、死者で占める割合は41%になっています。

アフリカ系米国人は基礎疾患として、心臓病、糖尿病、がんなどを患っている数が多いうえに、感染リスクが高い仕事に従事している傾向が高いのです。また、無保険者が多いことなどが死亡率の格差につながっているようです。こういった健康格差は貧富の格差から生まれていると考えられます。日本は国民健康保険制度で長い年月の中で医療に守られている国であり、医療格差が元々ないことも、今回の致死率の低さに関係している可能性が出てきています。貧富の差と、医療に日頃からアクセスできていたかどうかが、数字を通して顕著に表れています。あらためて今、日本の国民皆保険制度・医療の質の素晴らしさについて、各国からの見直しが進むでしょう。